私の推しは冷めています。【桃】

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「佐久間君、また会いたい……」
「だぁめ」
「好きだもん」
「ファンとして好きでいてね」
「それはもちろんだけと、」


　次々に荷物を持たされる。……ちょっと重い。


「持てる？ 部屋まで運ぶ？」
「……いい」
「にゃは、そこは甘えないのねぇ」


　そうだよね、ここで甘えて時間を稼げないのが私だ。やだやだって駄々こねて、また会えるチャンス作ればいいのに、嫌われたくないとか迷惑かけちゃダメだとか思っちゃう。


「……はあ、泣かないでよ。最後にって約束だったでしょ」
「泣いてない。ゴミ、入っただけ！」
「……そ。じゃあ、行くよ」
「…………」


　何か言葉にしようとすると、ギリギリのところで泣くのを耐えてるのにボロボロと涙が溢れそうで何も言えない。荷物があるから拭うことも出来ないし。
　パタンと運転席のドアを閉められたのが、心のドアも閉じられてしまったように感じた。
　今日あんなに楽しかったのに、笑ってくれていたのに可能性の一つも残してくれない。


「……早く入りな。じゃあね」
「……応援、してるっ」
「うん、ありがとう」


　車が去ったのを見届けて、つぅと涙が頬を伝った。
　泣けば良かった。泣いて引き止めたら、少しは未来が変わっていたのだろうか。いっそ元彼のように嫌いになって終われたら楽なのに、佐久間君の事は嫌いになんてなれない。
　だって思い出すのは楽しかったこと嬉しかったこと、かっこいい可愛いって言う幸せなことばかりだから。
　でも一つだけ、私は彼に文句を言いたい。




「こんな素敵なものプレゼントしないでよ、ばか」


　最後にってくれたのかもしれないピアス。佐久間君との思い出がほしくて選んでもらおうとしただけだったのに、それ以上の物となってしまった。
　使いたいけど使えないじゃん。無くしたり壊したりしたら立ち直れない。……使用用を買っておけば良かったかも。
　そしてこんなタイミングでテレビをつけたら、スノーマンの最新シングルのCMが流れてきて、ボーッと見入ってしまう。



「やっぱり佐久間君が一番かっこいい…………」

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