＿＿ ページ33
「ふぃぃ〜」
さぶん、と浴槽に身を沈めお湯が流れて行く。肩まで一旦浸かってから暫くして腕を外へ出して天井を見上げた。
『そろそろ忘れて、前に進みなよ』
さっき阿部ちゃんに言われた言葉がぼやーっとした脳裏に蘇った。
忘れてる、つもりだった。俺は俺なりに吹っ切って前に進めてるつもりなんだよ阿部ちゃん。出来ることなら思い出したくもない俺の苦い思い出。
.
「あー！ 潤君だ、かっこいいなぁ」
家で弟と俺と近所に住む幼馴染の女の子ユリとの三人でテレビを見ていると、その時テレビで流れた芸能ニュースで嵐の松本君が映ると、それまで漫画を真剣に読んでたはずのユリはテレビ画面に釘付けになった。
テーブルに身を乗り出して松本君を見詰める顔は子供ながらに恋してる感じというか、ほんのり頬を染めて可愛いなって思って見てた。
当時の俺は幼馴染を密かに好きで、でもまだ小学生で内気な事もあって好きなんて伝える気はなくて、ただいつも幼馴染として兄弟含めて遊んでいた存在。そのユリがアイドル事務所のタレントにハマってからは、クラスでも女子だけで集まってキャーキャー騒いでいるのを遠目で眺めていた。
「大ちゃんも案外いけるかもよー？」
「なにが？」
学校からの帰り道、俺の顔を覗き込みながら言うユリは「履歴書送ってみれば」なんて言う。つまりジャニーズに入れってこと？ この俺が？
「だってさ大ちゃんダンス上手いじゃん！」
「それは、好きだから。でもジャニーズって、無理だよ……」
俺にはあんなキラキラした世界は無理だってこの時は思ってたんだ。人前に出て歌ったり踊ったりなんて恥ずかしくてとても出来そうもないし、ユリが推していた松本君みたいに演技なんてもっと恥ずかしくて無理。
「三組の吉田はお姉ちゃんか履歴書送ったらしいよ！」
「へぇ、どうなったの？」
「知らなーい。あ、今日家行っていい？ あの漫画の続き読ませてよ」
きっと最初から大して興味なかったんだと思う。ユリも俺みたいな陰キャがジャニーズに受かるわけないって思ってたけど、万が一にでもって思ったのかもしれない。けど当の本人かやる気を見せなかったから、もう気は逸れて直ぐに漫画の話にすり替えていた。
正直ホッとしてひとつ返事で良いよって言えば家の前で「宿題したら行くね！」と言って別れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1418人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - ありがとうございます😌新鮮な💗さんになっているでしょうか。楽しんでもらえたら嬉しいです！💚にも主人公にも頑張ってもらって彼の心を開かせたいですね！ そうなんです。使えないから2個買えば良かったって思う子です😁 (2023年2月27日 15時) (
レス) id: 928c91c1dd (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - これまでにあまりない感じのさくまさん、、どう心開いて？近付いてくるのか気になります！あべちゃんにもぜひまた頑張ってもらって😉お買い物も憧れますがピアス選んでくれるなんて大事すぎて使えませんね(//∇//) (2023年2月21日 19時) (レス) id: ff23500b61 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - sakiさん» コメントありがとうございます😊 ツンも、めちゃくちゃツンじゃないのがいいですよね！って思ったらもっとって言われちゃった😂 (2023年2月18日 13時) (レス) id: a30efcea94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございます😊 💚ちゃんこれが💗さんの為になると思ってやってます😊元彼はきっとまた出てきます(笑) 頑張ります！！ (2023年2月18日 13時) (レス) id: a30efcea94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 流布さん» ありがとうございます😌 閲覧垢じゃないからと、しっかり守ってくださるの有難いです！どんな形でも感想頂けることは1番の励みになるので嬉しいです😆 (2023年2月18日 13時) (レス) id: a30efcea94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2023年1月30日 16時
