私の推しは冷めています。【桃】

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口をパクパクさせて何か言っている。”お店出よう”……、うん。頷いて佐久間君の後を着いて外に出た。何も言わずに歩いてる佐久間君の腕の中には、さっきの猫のぬいぐるみ。

「それ……」
「ん〜可愛くない？ 売ってたからつい買っちゃったわ」
「……うん、可愛い」


　ぴと、と頬にぬいぐるみの手が触れて、ん？ と視線を上げると佐久間君が言う言葉に合わせて猫ちゃんを動かし始める。


「泣きそうな顔しないでにゃ〜」
「……だって、」
「慣れてる、とは言わないけどさ。でも居て当たり前だから。全員に好かれようなんて思ってねぇよ俺は。俺は俺やメンバーを応援してくれる人の為に佐久間大介で居続けるから。だから、ありがとう」


　猫ちゃんの手を借りて私の頭を撫でた。直接撫でてくれてもいいのになんて思いつつ、ふふっと嬉しくなって笑みが浮かぶ。
　ほらね、こうして落ち込む度に佐久間君は元気にしてくれる。こんな素敵な人、好きにならずには居られない。



「さーて、気分変えて次行きやすかー」
「あ、私ピアス欲しくて！」
「んーっと、ほいじゃーあっちだわ」


　また猫ちゃん使って行く方向を指してる。相当気に入ったのね。可愛い…………
　お店に入るとどれにしようかって選ぶ前に佐久間君にズイって寄って「選んで下さい」と迫る私。最初から決めてたんだ。此処で佐久間君に絶対ピアス選んでもらうんだって。


「えぇ、文句言わないでよ？」
「言わない言わない」
「うーん、……あ、これ……」

　ピンクゴールドの波打ってるデザインのやつ。ちょこっと謙虚にキラキラしていてお洒落で可愛い。


「つけてみなよ。こうやって耳掛けて出したら可愛いじゃん」

　アドバイスまで貰ってしまった。佐久間君からすればアドバイスでもなんでもないかもしれないけど。触れられた耳が熱い。
　ドキドキしているの、佐久間君に聞こえてるんじゃないかってくらい私には煩い程で、ピアスを耳に当て小さな鏡を共に覗き込む時なんてもう顔が真っ赤で見てられなかった。


「いいじゃん、似合うと思うよ」
「こ、これにする！ 絶対絶対これにします！」
「……貸して」


　出された掌の上にピアスを置くと何も言わずにレジへと向かう。え、もしかして？ なんて思った通りで、佐久間君はピアスを購入した。
　自分で似合うよって選んでくれたピアスを、私にプレゼントしてくれたってこと……だよね？
　

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