in the summer３【J.M】 (ページ3)

今日:5 hit、昨日:14 hit、合計:43,084 hit

５１ページ3

「あなたはもう体調大丈夫なの？」
「うん大丈夫。ごめんね、昨日来れなくて。二日間休んだし、多分疲れだから」
「だから心配なんじゃないの。風邪なら薬で何とかなっても、疲れでしょう？帰ってきたばっかりだし日本も馬鹿みたいに暑いし。一人だと大変じゃない？暫くこっちに居たら？」

松本に伝えた通りに実家にやってきたAは、父親の見舞いのあとに台所で母親の作った焼きそばを食べていた。
妹は臨月になり、毎週妊婦検診があるため午後に顔を出すよと言っていたが、あんまり日差しが強いから車で迎えに行こうとAは考えている。

「大丈夫だって、それに看病してくれる人、いるから」

サラッと伝える。
言外に、そういう相手、いわゆる恋人がいますよ、と。
相手が相手なだけに根掘り葉掘り聞かれても困るし、大仰にはできない。
でも松本は言っていいと言ったし、むしろ嬉しいとまで気持ちを教えてくれたから。

(その気持ちが嬉しかったもんなぁ)

どこか恥ずかしそうにはにかんでいた、濃くてイケメンなのに可愛い彼を思い出す。
あの顔面とあの性格だ。恋愛なんてそれこそ百戦錬磨だろうに、いちいち初心な反応をする時があるからまた困る。

(ほんと潤って凄い。何が凄いって全部凄い)

そんなことを思っていると、自然と口元がにやけてしまう。

真正面に座っていた母親は「そうなの？あらっ、あら！」と嬉しそうに笑っている。
気恥ずかしいけど、親の嬉しそうな顔はやっぱり嬉しい。
「いつの間に？」
「だから向こうで知り合ったんだってば」
「アメリカの方？」
「日本人」
「年上？お仕事は？」
「年上。素敵な人だよ。ちょっとまだ紹介とかそう言うのは無いけど、真剣交際なんで見守ってて」
「解ったわよ。あなたそう言うのはきっちりしてるから、まぁ相手がいるなら一安心ね」
「一安心って‥‥その、結婚とかそう言うのも何にもまだ無いよ？それでも安心するもんなの？」
アメリカ暮らしが長い短いにかかわらず、Aは昔から親とは結構遠慮なく話す関係を築いてきている。
だから今もスパッと訊いてみた。

実際松本と結婚とかAには想像ができない。
それは、結婚したくないとか出来ないと言うレベルではなく、まだそこに至るほどお互いのことを知らないと言う現実的な話が二人の間に横たわっているからだ。
それなのに、一緒にいるときはそんな距離も障害も感じないから不思議でもある。