６０(7/31up) ページ12
ふと、覚醒する。
ぼんやりした視界に映る天井が、ここが自宅ではないとAに教えてくれる。
日本に帰国してから、はや二週間が過ぎていた。
松本と再会してからこちら、仕事が始まるまでの一か月間の予定はほぼ彼で埋め尽くされていると言っても過言ではない。
それで構わないとAは思っている。彼女の仕事が始まれば忙しくなって、きっとこんなに一緒には居られないから。
「潤、潤起きて、アラームが鳴るよ」
「‥‥あ？」
「本当に毎朝毎回清々しいほどに寝起きが凶悪ね‥‥イケメンだから余計に」
そう言ってAはなんてことないよと言うように、松本の唇にキスをする。
ちゅむっとくっついて、離れていく。唇が震えるようなキスに、松本が寝ぼけ眼のままシパシパと瞬きをする。
「‥‥A？」
「うん？ 起きた？」
松本に背中を向けてベッドに腰かけたAは、ブラをつけているところだった。
白い背中には、昨日から未明に松本が散々付けた赤い痕が見えている。
そっと手を伸ばす。
「っ、なぁに」
松本の指先がAの背に触れて、確かめるように指の腹から掌全体がぴったりと当てられる。その熱にAはため息をつく。それすら色付いているような錯覚。
「Aの今日の予定は？」
「え？ っん‥今日は、午後、会社の上司に挨拶に、行く、の」
Aの背中に手を当てていた松本は、今度はその手をひっくり返して爪先で素肌に触れるか触れないかの距離を撫でていく。
白い背がしなるように伸びて、Aの口から漏れる吐息が熱を帯びる。
「ちょっ、と‥‥潤、こらっ」
「時間まだあるだろ？‥‥だぁめ」
そう言って、つけたばかりの下着のホックを外して、後ろから抱きしめる。
零れる胸を包むように両手を回して、揉むわけではなくその感触と重みを確かめるように松本は手のひらに少し力を入れた。
「も‥‥You're such a baby...」
「なんて？」
チュッと音を立ててAの肩を食みながら、完全に起き上がった松本がさらに身体を密着させる。
胸を包んでいた指先が明確な意思を持って、いたずらに彷徨い始めていた。
「んっ、ふふ‥‥甘えん坊だなぁって言ったの」
「言ったな」
「言ったよ、潤ってば本当に可愛い」
「可愛くねぇよ、おらっ」
「きゃー！」
グッと後ろに引かれたと思ったら、二人してベッドに仰向けに倒れこむ。
Aが目を開けると、目の前にはいつの間にか松本の顔があった。
降ってくる唇を受け入れない理由も無かった。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年6月28日 2時
