in the summer３【J.M】 (ページ11)

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「お邪魔します」
促されて足を踏み入れた玄関は、そこからもう洗練されている。Aは、ほぅ‥と感嘆のため息をついた。
ところが後ろでは松本が「そこはただいまでしょ」なんて言う。
「初めて来たのに？」
「初めてでも、Aにはそう言ってほしいから」
「‥‥ただいま」
「おかえり、いらっしゃい」
松本の子供じみた願望をAは否定しない。
頬を染めて嬉しそうに口にした、お互いを大切に思う言葉はまっすぐに胸を打つ。

「A‥‥」

緩く抱きよせてキスをすると、Aも薄く口を開いて受け入れる。
お店で触れようにも触れられなかったから、キスは最初から深いものになった。

「ん‥‥はっ、ふ‥‥」

時折漏れるAの吐息にと密やかな喘ぎに松本の胸も身体も苦しくなる。
再会してからほぼ毎日会って、毎日身体を重ねているというのに。数時間前にも抱いたばかりなのに。
こうやって触れれば途端に体中を駆け巡る欲望。
熱情の炎に焼き尽くされそうな気さえする。

「んや、待って潤、シャワー浴びたい」
「一緒に浴びよう」
「‥それシャワーだけで済む？」

悪戯に笑うAに、「A次第。煽んないでよ？」なんて返す松本も笑っている。

「ええー？潤変なとこ触んないでよ？」
「変なとこって？ここ？」
「っん」
「それとも、ここ？」
「ぁっ！‥‥ばか」

きっちり把握しているAの気持ちいいところを服の上からなぞって、酔い以外の理由で頬を染める彼女に松本の気持ちは昂るばかり。
そして、それは松本だけではないと、首筋に腕を回して襟足を撫でてくるAにも感じて、二人の間の空気はどんどん甘く重いものに変わっていく。
まとわりつく、官能の気配。
もう一度キスをして、二人は浴室へと足を向けていた。

案の定、ただシャワーを浴びるだけで終わらなかった仲良しお風呂タイムを満喫して、ようやくAはゆっくりと松本の自宅リビングを見回すことができた。

「もう寝る？」
「潤の明日の予定は？」
「昼から」
「じゃあもうちょっと飲んでも良い？」
「ビール？ワイン？」
「赤！」
「了解、座ってて」

腰を下ろした座り心地が良く沈み込み過ぎないソファに背中を預けてため息。
松本の気配がそこら中に満ちている室内。
優しい間接照明と、冷たすぎない冷房。
瞳を閉じて、Aは深呼吸をした。

彼を強く感じて嬉しくなってソファに転がるAの後ろ姿を、松本が締まりのない顔で見つめていた。