【学パロ】君に胸キュン２【詰め合わせ】(J.M) (ページ7)

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「ただいまー」
「おーおかえり」
リビングに行くと、お兄ちゃんがにこにこしていた。手招きもしてくれて、なんだろうって近づく。
そこには、いつものケーキ。

「あれ、マツジュンさん来たの？」

車も姿も無いし、本人も昨日「俺も明日から仕事」って言ってたから来ないものだと思っていたのに。

「そ。ケーキだけ届けに」
「なんで？」
「今日からA学校でしょ。がんばれ、だって」
「え」
「チーズケーキ三つあるけど食い過ぎんなよって言ってたよ」
「そんな、食べないもん‥‥」
言いながら顔をそむける。
耳まで熱かった、赤くなった顔を見られたくなくて。

なんなの。マツジュンさんってなんなの。
最初はなんだか嫌な人だなって思ったのに、会うたび全然違うって思い知る。
なんでそんなに私のことを気にかけてくれるんだろうか。
お兄ちゃんの妹だから？
それとも危なっかしい？
わからないけど、お兄ちゃん以外の誰かが向けてくれる心配とかそういう気持ちが久しぶりすぎて、くすぐったくてしょうがなかった。

「食べる？」
「うん、食べる」

お兄ちゃん二人、紅茶とコーヒーでケーキを楽しむ。
そんなにたくさん会話をするわけじゃないけど、久しぶりの穏やかな感じが嬉しかった。

「Aさ」
「うん？」
「進路のこととか、学校からなんか言われたらちゃんと言えよ？」
「‥‥うん」
「俺は兄ちゃんだけど保護者でもあるんだからさ」
「‥‥うん」

美味しいケーキがのどに詰まったような気分になる。
どこか誇らしげなお兄ちゃん。
私の、自慢のお兄ちゃん。

もういいよって、早く言いたいのに。

「今日から選択授業が始まるけど、それぞれの当番は毎回授業前に担当の先生のとこ行くように」
ＨＲ中に担任が言っていた言葉を思い出す。
配布物とか必要なものを準備したり色々下働きしなきゃいけない決まりがある。

「Aちゃん、自然科学の当番なの？」
「うんそう、行ってくるね」
「じゃあまたお昼にね」
「うん」
新学期が始まって一週間。私は何と毎日学校に行っているし、授業にも出ている。
相変わらずそんなに楽しくはないし、いつも帰りたいと思っている。
でも。
私の背中をわざわざ押してくれたマツジュンさんのことを思うと、自然と足は学校に向かった。
何も言わないけどお兄ちゃんはとても嬉しそうで、創作意欲が沸く！！ってアトリエに引きこもっている。

私はあの日曜日に会った以来、マツジュンさんには会えていない。