【学パロ】君に胸キュン２【詰め合わせ】(J.M) (ページ6)

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始業式の体育館で、校長先生の話を適当に聞き流す。
新しい学年の始まりは皆ソワソワしていて、どこか静かになりきらない体育館は全体が浮足立っているような気がする。
新しく赴任してきた先生の紹介になったとき、ざわめきが少し大きくなった。

ん？なんだろう。
そう思って顔を上げると、ステージ上には三人の先生が立っていた。

「山口ともかです」
そう挨拶したのは女の人。
ゆるふわに巻いたセミロングの髪を後ろで一つにまとめて、かわいらしいツイードのサーモンピンクのスーツに身を包んで、キリっとしているその顔からは緊張が見える。
新卒教師らしく、年齢が近いからか周囲の男子が色めき立っているし、女子はヒソヒソしている子も結構いた。
まぁかわいい感じの人だよね。

「杉山と言います、三年生の数学担当です」
そう言ったおじさんは、ひょろっとしていて頭が半分くらい禿げ上がっている。どこかトレンディなんちゃらって芸人さんのどっちかに似ている。
杉山と言ったのになぜか「ハンサムと呼んでください」とのたまう。理由が「髪の毛が半分ほど寒くなってきたのでハンサムです」だったから流石にみんな笑っていた。

最後は多分若い男の先生。
なんで多分かと言うと、重ための前髪をもっさりとおろして目が半分くらい隠れているから。しかも黒縁眼鏡をかけていて、余計に人相が分かりにくい。
その人がぼそっと「科学と生物担当の松本です」と言った。

(‥‥あれ、)

どこかで聞いたことのある声だなって思ったけど、そもそも教師の知り合いなんていない。
マイクを受け取って何か話し出す教頭先生の話を聞き流す。
俯いて、早く終わらないかなって考えている。
そんな私に注がれる視線があるなんて、全く気が付かなかった。

「化学か生物か、私は自然科学だから」
選択科目を選ぶ用紙を見つめて呟く。
受験対策として自分に必要な選択科目を選ばなくてはいけないので、三年生には三日間の猶予がある。
私は進みたい学部が自然科学の関係で、化学よりも科学だからそこだけは自信をもって丸を付けた。
「Aちゃんは科学なんだ」
「うん、化け学の方は相性最悪だし」
「私もー。でも私そっち取らないといけないんだよね」
「そっか」
一年生の頃から同じクラスの田中さんがニコニコと話しかけてくれた。いい人だなあぁって思う。
私だったらそんなにクラスに来ない子、気にかけたりしないのに。

「松本先生、かぁ」

赴任の挨拶が超簡単だったなと思い出す。