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「あれAちゃん休憩？」
「はい、取り敢えず一段落です。３０分休憩して、また頑張ります」
目敏く近寄ってきたマツジュンさんからお酒の匂い。嫌いじゃないけど、なんだか不思議な感じ。
白い肌を赤くしてにこにこしてるのは気分良く酔っ払っている証。
「お水か何か飲みますか？」
「うん、ちょーだい」
子供みたいな舌足らずな口調にくすぐったい気分になる。
「じゃあ皆さんの用意します」
グラスを４つには氷水、１つは常温水、そして私用に麦茶を入れる。
常温しか飲まないって言うマツジュンさんのこだわりは、お腹弱いのかな？という感想を私に抱かせた。
「ありがとう、持ってくよ。順調？」
「はい、今の所。夏期集中講座が来週からなんでちょっとドキドキしてます」
どうせなら実力チェックもしたいと思い、夏だけゼミに申し込んだ。
それが来週から始まるから、ワクワクとドキドキが入り混じっている。
「どこ？」
「駅前の」
「ああ、あの大手の進学ゼミね。イイんじゃない、振り返りにもなるし」
そう言うマツジュンさんは先生の顔を覗かせたあと、フッと口元だけで笑った。
「志望校、県立だっけ」
「そうです。珍しく海洋学部があるので」
「俺それすっごく意外なんだけど」
「前も言ってましたね」
テーブルにコップを置くと、それぞれにお礼を言って手が伸びる。
全員が受けとったのを見届けると、マツジュンさんがこっちって私の手を引いた。
リビングから中庭に続く大開の窓のすぐ横にあるベンチに並んで座る。
熱帯夜の風はなんにも気持ちよくないのに、隣に好きな人がいるだけで全然気にならなくなるのが自分でも現金だと思う。
麦茶のコップを両手で持ってそっと隣を伺うと、マツジュンさんも私を見ていた。
優しく細められた瞳に胸がキュンとなる。
私の中にこんな乙女が居たんだなぁって驚きばかりが増えていく。
「海好きとは聞いてたけど、進路の選択肢になんのかぁって。しかも女の子じゃん？いや男だけの世界とは思ってないけど」
「昔から好きなんです。どうせなら徹底的に調べたくなるんです」
「はー、研究者になりたいの？」
「うーん‥でも出来るなら船に乗って航海しながら調査とかしたいです」
テレビで見る学者に憧れて、ずっと海洋学者を目指してる。
「なにそれ、じゃあ俺将来ほっとかれちゃうの？」
「え？」
言われた意味がわからなくて横を向くとちょっといたずらっ子な笑みを浮かべたマツジュンさんと目があった。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年6月7日 0時
