３８ ページ38
「ほんっと馬鹿だなA」
そういうと、お兄ちゃんは気持ちを落ち着かせるように、一度深呼吸をした。
私を見つめるまっすぐな瞳に真剣な色。
でも私はもうその瞳と向き合うことを怖いとか嫌だとか思わなかった。
「あのな、俺はお前の年の時にちゃんと親父とお袋がいて、お前もいて、それぞれ年齢の時に受ける親の気持ちを与えてもらってんの。いろんな思春期の問題にも向き合ってもらってきたの」
「う、うん」
何の話なんだろう。戸惑う。
だけどちゃんと聴いて、受け止めたい。
今まで私のために全てを投げうってくれてたお兄ちゃんの言葉を。
「でもAはさ、そーゆー大事なもの受けとる前に失っちゃっただろ‥‥自分までケガして。だからその分俺が親父とお袋の代わりになって全部受け止めようって思ったんだ」
「お兄ちゃん」
「Aがその時々で受けとるはずだった愛情とか叱咤とかそーゆーの、取りこぼさせたくなかったんよ。だから、眠いのも忙しいのも気になんなかったよ俺は」
そういうお兄ちゃんはその当時のことを思い出すような顔をした。
「嫌な仕事も経験だって思えたし、実際タメになったことも沢山あんのよ。Aのために頑張りながら、俺は俺のために沢山のことができてたよ、大丈夫なんだよ本当に」
まぁところどころ上手くいかなかったけど、とお兄ちゃんは眉を下げて笑った。
「わ、私‥私‥‥ごめんなさい」
そんなこと知らなかった。
お兄ちゃんがそんなことまで考えてくれていたなんて。
「俺もごめんなぁ。ちゃんといつだって向き合って話してくれば良かったな。Aの気持ち、ちゃんと言葉で聞けばよかったなぁ」
「っ‥‥う、ん」
「これからは一杯いろんな話しような。進路のことも、それから先のことだってな」
「っ、うん、うんっ！」
またどうしようもなくぼろっぼろ泣いて。お兄ちゃんも泣いてて。
ふと見たら相葉さんも号泣してたし、二宮さんがちょっと目頭をぬぐった。櫻井さんもうるうるしてて、マツジュンさんは私を見てうんって頷いてくれた。赤くなった目元が優しい弧を描いている。
だから、思わず口にしていた。
「お兄ちゃん」
「うん？」
「私ね、私‥‥マツジュンさんのこと好きなの。大好きなの。高校卒業したらお付き合いしたい」
いろんな意味で時が止まってしまった。
そしてそのあと上へ下への大騒ぎになったのは言うまでもない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年6月7日 0時
