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そんな感じの対応を続けて、来週からテストって言う火曜日。
この日も選択教科があって、午後一だから昼休み中に松本先生の所に向かう。
明日からテスト前ということでそれぞれの準備室には入れなくなるから、今日が今学期最後になる。
二回ノック。
「大野です」
いつもなら「どうぞ」って聞こえる松本先生の声がしなかった。
代わりに、何か物音。足音。
それから開かれた扉の向こうに松本先生。
「今日早いね大野さん。申し訳ないけど昼休みの終わり10分くらいにまた来て貰っていいですか」
その松本先生の後ろに、山口先生が椅子に座っているのが見えた。
今度こそ、泣いている。
みぞおちがぎゅうって雑巾絞りされてるみたいに痛くなった。
「すみません、でもプリントだけなら」
「あとで。来てもらえるかな」
有無を言わせない静かなのに強い口調。
松本先生と言うより、これはマツジュンさん。
そんなのズルい。
「はい‥‥」
私の返事なんてどうでも良いように閉じられた扉の前で立ち尽くすのだって馬鹿らしくて、教室に戻った。
めちゃくちゃ嫌な気分だった。
お昼ご飯を食べる気にもならなくて、教室でただただ座っていたらいつの間にか松本先生に言われた時間が迫っていた。
ノックを二回。
「大野です」
やや間があって、「どうぞ」の声。
扉を開けると、そこには松本先生が一人。
だけど、知らない匂いがする。たぶん山口先生の香水。
香水つけてるのかよ新任教師が！みたいな気持ちになるくらい、私は荒んでいた。
「大野さん？扉しめて」
松本に言われて渋々閉めるけど近寄らない。
「大野さん、さっきはごめんね。ちょっと深刻な話だったから」
「‥‥この間も来てましたね、山口先生」
「新任でいろいろ悩んでるみたいでね。でも他の子に黙っててね、噂になっても困るし」
噂って何。
山口先生と付き合ってるとかそういう噂になったら困るってこと？
「今日のプリントどれですか」
「うん？今日は無いです」
「え、じゃあ何か運ぶ道具とかありますか」
「それも無いです」
「‥‥なんで私ここに呼ばれたんですか」
「んー‥‥」
椅子に座っていた松本先生が私の方を見る。
重たい前髪、黒縁眼鏡。
その向こう側の二重で綺麗な瞳。
「だってさぁ、あからさま過ぎない？なんでそんなんなっちゃったの？」
「！？松本先生？あの‥‥っ」
目の前にいるのは松本先生の顔をしたマツジュンさんだ。
一歩近づかれて、一歩下がる。
「あ、あの、先生」
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年6月7日 0時
