２４ ページ24
担任としてというよりも、教師としてその発言はどうなんだろうと思う。
「別にそんなことないです、ただ受験の事考えたら全部頑張ってます」
と言って、少し話をして職員室を出た。
担任は、やっぱり私の進学先のランクを上げたらどうかって言ってきた。
県内ではなく、遠い県外の国立。
狭き門だけど、行けない場所ではないから頑張ってみないかって。
嬉しい言葉だった。
だけど、行けないよ。
その週の選択授業の前、私は久しぶりに準備室の前にいた。
ノックを二回。
「失礼します大野です」
「ああ、どうぞ」
いつもの松本先生の声がして、扉を開けると、そこはいつもと違っていた。
だっていつもは居ない人がいたから。
「山口先生」
新任の山口先生。下の名前は忘れちゃった。
松本先生と向かい合って座っていて、何か空気が深刻そう。
やだな、嫌なとこ来ちゃったな。なんで松本先生「どうぞ」なんて言ったの。
なんとなく中に入りづらくて入り口で立ち尽くしていると、山口先生が私の方をちらりと見てから「ごめんなさい、もう終わります」と立ち上がった。
ちょっとだけ、泣いてたような。
「松本先生、ありがとうございました、すみません」
「いいえ。また何かあったら相談に乗りますよ、頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
深々と頭を下げて準備室を出て行った山口先生の後ろ姿をぼんやり見つめていたら、すぐ近くに影が落ちた。
「っ！！」
いつの間にか一歩先に松本先生。
「入らないの？」
「‥‥失礼します、すみませんお話し中に」
「良いよどうせ終わるとこだったし。ああそれ今日のプリントです」
「はーい」
いつもの長机の上のプリントの束を手に持って、さっさと部屋を出ようとする。
そんな私の背に声がかかった。
「気になる？」
「へ？」
「山口先生、何しに来てたのか」
振り返った先の松本先生。
口調は楽しそうなのに、目は。
重たい前髪と黒縁眼鏡の向こうの目は笑っていなかった。
恥ずかしさよりも腹立たしさが先に立つ。
学校でもからかうんだ！？信じられない！！
「なりません、失礼します」
廊下を歩く私の足音、きっと今までで一番乱暴だったと思う。
授業中はいつもとなんにも変わらない松本先生だったのがさらに腹が立った。
なんなのこの人！！むかつく！！
その週の二回目の選択授業の前は、準備室のドアを開けたまま無駄話なんかせずに対応した。
松本先生が微妙な顔をしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年6月7日 0時
