【学パロ】君に胸キュン２【詰め合わせ】(J.M) (ページ17)

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自室で一人、眺めてみる。
今日拾い集めた色とりどりのシーグラスは、なんとなくとっておいたジャムの瓶に入れてみた。
その中でひと際私の目を引く紫色。
途端に、波の音を思い出す。

マツジュンさんの吐息が聴こえるほどの距離にあった、あの強い視線を思い出す。

「～～っ‥‥」

まるで病気みたいに強く速く打ち付ける鼓動に、顔を覆う。

私もう、たぶんきっとダメだ。
どうしようって思ってもどうしよもない。
マツジュンさんのこと、好きになってる自分がいる。

「どうしよ‥‥‥」

今夜はもう勉強はやめだ。どちらにしろ疲れてて手につかない。
電気のリモコンを操作して部屋を暗くすると、すぐさま眠気がやってきた。

耳の奥で波の音が聴こえる。
マツジュンさんの、私を呼ぶ声が聴こえる。

『Aちゃん』

ああ、好きだな。
久しぶりに心がふわふわする感覚に包まれて、私はあっという間に眠ってしまった。

そのプリントをぎゅっと握りしめる。
西日差す、学校の廊下。
置かれた椅子に座ってちらりと横を見ると、スーツ姿で前髪をちょっと上げたお兄ちゃんがいる。
不思議な感じ。
「ね、お兄ちゃんも高校ここだったんでしょ？」
ひそひそ話しかけると、「そうそう、なつかしーわ」と返ってきた。
「知ってる先生がまだいるんだね」
「私立は結構そうなるみたいだな、声かけられてびびっちった」
「お兄ちゃん猫みたいにびっくりしてたもん」
「言うな」
クスクス笑って、それから姿勢を正す。

進路指導の三者面談。
一応お兄ちゃんは私の進路希望を知っている。
私が進みたい大学のことも伝えてある。

最近、以前よりもずっと過ごしやすくなったのは、たぶん私の気持ちが違うから。
お兄ちゃんに対する負い目はずっと消えない。
でも、それじゃダメなんだって何故か思えてきたのは、多分ーー。

「しかしここで松潤が先生やってっとはなぁ」

「多分見ただけだとわかんないよ」

遊びに来るオールバックのマツジュンさんと、学校のもっさもさの松本先生を思い出して比べてみる。
うん、やっぱりわかんない。
だけど、近づけばちゃんと同じ瞳をしている。
強くてきれいで意志のある黒い瞳。

「っ、んん」
「どした、便所か」
「違うっ！お兄ちゃんこそ。もうそろそろだよ」
「大丈夫」
そう言いながらもネクタイをちょっと整えたお兄ちゃんの横顔は緊張がうっすら透けて見える。
私の手汗も結構すごい。
いっそ早く一思いに殺して！みたいな気分で教室の扉を見つめた。