【学パロ】君に胸キュン２【詰め合わせ】(J.M) (ページ2)

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「ごめんね、通して？」
「あ、はい」
「大野さんトイレありがと」
「おー。ほらA、コイツがマツジュン。ケーキ買ってきてくれたから一緒に食おう」
ぽやぽや～な雰囲気のお兄ちゃんに呼ばれてちょっと心が動いた。
でも、お兄ちゃんの隣に座ったマツジュンさんの視線が、なんだか私を小バカにしている気がして。
子供が？混ざんの？みたいな。
そーゆー視線、私はよく知ってるから。

「‥‥今要らないからいい」

って答える。
お腹は減ってるけど、今ここで食べたいほどじゃないから。

「そっか、冷蔵庫に入れてあるから後で選びな」
「うん、じゃあ部屋行くね」

ドアを閉めようとしたとき、なんとなくマツジュンさんと目が合った。
鋭い視線にムッときて、ふんって顔を背けた。
そんな私の態度に、マツジュンさんとやらがどんな顔してたかは知らない。

二階にある自室に引っ込んで制服から部屋着に着替えて、私はまた部屋を出た。
二人で暮らすにはバカみたいに大きな家は両親が遺してくれたもの。固定資産税が大変ってお兄ちゃんが呟いてたことがある。
大野A。それが私の名前。
春から高校三年生になる。
今は春休みの補習中で、学校をつい休みがちになる私はこの補習のいつものメンバーってやつだ。
別に不良じゃない。
だけどあの日からずっと楽しくない。

お父さんとお母さんが交通事故であっけなく逝ってしまってから六年。
ずっとずっと、楽しくない。
でもそんなことお兄ちゃんに言ったら絶対悲しむから。あの優しいまなじりを下げて、瞳を曇らせて、きっと「ごめんな」って言うから、言えない。

毎日毎日息苦しくて、学校は好きじゃない。

私の生い立ちを知ってる先生が腫れ物を扱うみたいにしてくるのが嫌だ。
小中学校の知り合いが私の話をそれとなく他の子にしてるのも嫌だ。

12歳年上の智お兄ちゃんは、お父さんとお父さんの前の奥さんとの子供。
その奥さんが早くに亡くなって、そのあとお父さんは私のお母さんと出会った。
お父さんとお母さんの年の差は10歳だった。
智お兄ちゃんが10歳の時に、二人は再婚した。
そしてその二年後に産まれたのが、私。

智お兄ちゃんとは半分しか血が繋がってなくて、年齢も一回りも違う。
それでも私が生まれてからずっと、今日まで、いつでもお兄ちゃんは優しい。
大きくてあったかくて、でも内に秘める熱いものがある、大海原みたいな人。

私のために、たくさんのことを我慢してくれている、そんな人。