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梅雨になって、緑化委員会の仕事の水やりは日によって無くなった。
蒸し蒸しとにかく蒸し暑い夕方の中庭の花壇の前で、私と潤は相変わらず雑草を抜いている。
一週間に一回雑草抜きをしてるのに、時期なのかすぐに生えてくるこいつらが憎い。でも、たくさん生えてるとその分時間がかかって、その分潤と一緒に居られるから雑草の事ちょっと好き。
今にも降り出しそうな曇天の下でも、やっぱり潤は格好いい。
首からタオル掛けておっちゃんみたいなのに、やっぱり格好いい。
私も首からタオルを下げて、掃除のおばちゃんみたいになってないかなってちょっと心配だけど、ぼたぼた滝のように流れ落ちる汗を前にタオルの装備無しではいられない。
「あ」
あらかた雑草を抜き終わってうーんと伸びをした私の横で、ふと潤が声を上げた。
「どしたの」
「あれ、雅紀」
そう言って指さしたのは、告白のメッカ伝説の桜の木で、その下には私たちの友人相葉くんと、見知らぬ女の子が立っていた。
それだけで、ああ‥と理解する。
見ちゃいけないと思うから目をそらすけど、やっぱり気になってしまう。
何を話しているかは判らないけど、ここからでも真っ赤な顔をした女の子がなにか言って、相葉くんがそれに返事をして。
――ああ、わかっちゃう。
下を向いた女の子が、震えている。
相葉くんの背中が困ってる。
何か話して、そうしてぺこりとお辞儀をして走り去る女の子をしばらく眺めていた相葉くんは、私たちに気が付かずに体育館の方へ向かった。そうか、バスケ部だったっけ。
なんて言えばいいのかわからず、ぼーっと突っ立っていた私。
その隣で潤がポツリと呟いた。
私にというよりは、独り言だったのかもしれない。
「しんどいよな、やっぱり」
「しんどい？」
どういう意味なんだろう。
告白が重いってことなのかな？って潤の方を見ると、彼はまだ桜の木を見つめていた。
「向こうはさ、俺らに気持ち知ってもらいたいってコクってくるけど、顔も名前も知らない相手だったら絶対断られるってフツー思うじゃん」
「う、うん」
今まで、潤がこんな話をすることがなかったから、心臓が変にドクドク逸ってる。
「毎回断んのもキツいし、そのあと絶対なんか言われんのもやっぱ嫌だよ俺らは」
「‥‥好きって気持ちは、重い？」
やっと絞り出した言葉。
私ののどはカラッカラに乾いている。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
