小話２−５ ページ47
そしてあの夏祭りの前日の夜。
俺と茜の抱擁を見て、動揺して逃げ出したAを追いかけたけど、すげぇ足はっやいのな。
追いつけないどころか階段を降り切った公園で姿形も見つけられなかった。
何度も何度も電話してもラインを送っても、出ないし既読にもならない。
狼狽する俺に、同じようにどうしようって狼狽えた茜を家に送ったあと、ニノに思いっきりボディを殴られた。
「泣かすなって言ったろ、潤くんなにやってんだよ」
後にも先にもニノのあんなに怒った声は初めて聴いた。
そのあと、Aはニノのラインに返事をくれたから、俺は掛けだした。河川敷なら大体の場所は解る。広いけど、通る道はおんなじだから。
後ろからニノが明るくてのんびりした声で「よろしく王子様ぁ！」なんて言いやがるから、笑ってしまった。
まぁそのあと、天国から地獄みたいなジェットコースターに乗せられて、最終的にAと二人で新しい天国に行けたのはハッピーエンドかなって思えた。
「え、告られたの？」
「告白って言うか、中学の時好きでしたって言われた」
「そう‥‥なんだ‥‥」
Aの受験が無事に終わって、なんでかバイトを再開させたAに文句を言いつつ、二人で気持ち良くなった気怠く甘い空気の中で。
俺が林間学校に行ってる間に翔さんに告白されたと言うAは、ちょっと困ったなって顔をしていた。
「‥‥どう、思った？」
訊いてどうすんだよって思ったけど、気になってしまった。
案の定Aは、「訊いてどうすんの」って笑った。
「うーん、まぁ嬉しいよね。過去形で良かったって思ったし。茜ちゃんとも話し合って、結局お互いに私と潤にヤキモチ焼いてたって話だったって謝られたから、どうもこうもないよ」
「俺が茜の相談に乗り過ぎてたってことだよな」
「まぁ男女の幼馴染なんていつ恋になるか！？みたいなドラマチックなとこあるもんね」
「Aも勘違いしたし」
「あれはするよ。‥‥もう、やめてよ？」
拗ねて突き出された唇がかわいい。
本人にその気がない上目遣いもかわいい。
もう俺の彼女最高にかわいいんですけど、なんだこれ！
「ん、反省してる」
「それならよろしい」
にっこり笑った顔はニノとちょっと似ている。やっぱり姉弟なんだなぁ。
「バイトさ、なんでそんなにやんの？」
「え？言ってないっけ、車欲しいから」
思いがけない答えに驚く。
Aも「そんな驚く？」って俺の反応に驚いてた。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
