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静まり返った潤の家。
我が家と一緒で看護師のお母さんと、国際線のパイロットのお父さんはしょっちゅう不在になる。5つ上のお姉さんは家を出て一人暮らしでここにはいないから。
この広い家で潤は一人、朝を、夜を過ごしていることが多い。
だからこそお隣の茜ちゃんちと仲が良くて、家族ぐるみの付き合いで、好きにならないわけがないよってずっと思ってた。
だけど。
今、リビングのソファに私を座らせて、抱きしめてくる潤の肩も腕を震えていて。
怒りなのか悲しみなのか分からないけれど、振りほどくことが出来なかった。
私だってこのぬくもりと匂いを振りほどけるほど、強くない。
「‥‥潤、あの」
「あの日、一年前‥‥Aに付き合ってって言ったとき、俺は確かにまだAのことを恋愛で好きじゃなかった」
突然の告白に、解っていたけど胸がぎゅっと狭くなる。
でも私だってあの時あの瞬間はまだ潤に何の感情も抱いていなかった。弟の親友で、いいこだなくらいにしか。
灯りをつけない暗い室内で、ぽつりぽつりと零される言葉に耳を澄ます。
ここから先にどんな結末が待っていても、私は潤の告白を最後まで聞きたいと思ったから。
「茜には、もっと前に告白されたんだ。だけど俺はアイツを幼馴染っていうか妹みたいに思ってたから、本気でそんな気持てなかったよ。それは、今もそう。
半年くらいしてさ、茜が気になる人が出来たって言うんだ。
それが翔さんで。中学の生徒会で一緒になって好きになったみたい。
俺嬉しかったんだよ、マジで。
俺にフラれて、茜どんどん元気なくなって。
応えられないから何もできなかったけど、心配だった。
でもさ、好きな人が出来たって言うから。
応援したくて、茜の事」
「そう、だったんだ‥‥」
「あの夏まつり、茜から翔さん誘ったんだよ、イチかバチかで。
だからあの日まだ二人付き合ってなかったの、ほんとは。
‥‥でもさ、俺知ってたんだよ」
そう言って私をちらりと見る。
そのもの言いたげな視線に「どうしたの」と返せば、少し言いよどむ。
「今だから言うし、っていうか忘れてほしいんだけど」
「うん」
「翔さん、Aのことずっと好きだったんだよ」
「へ！？私！？」
「あ、ほんとに気付いてなかったんだ。ニノの言った通りかよ。
うんまぁ、それで‥‥俺としては翔さんがA好きでも、茜が押せばうまくいくような感じに見えて‥‥」
だから、先にAに告白した。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
