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「夏祭り、一緒に行ける？」
ベッドの上、裸でごろごろしながらうつ伏せになった潤が、私の方を向く。
同じようにうつ伏せになってスマホを弄っていた私は、彼の方を向く。
「夏祭りって月末の？」
「そ、俺たちの記念日だし」
にかっと。
少年みたいな笑顔を見せる潤に胸の奥が変な音を立てる。
痛いような、くすぐったいような。
ごまかしきれない何かがすぐ喉元まで競り上がってくるようで、言葉に詰まった。
そんな私を見て潤がちょっとだけ眉を寄せた。かわいい顔をしている。
弟のカズのことを常々子犬みたいだなと思うけれど、潤もこんな時わんこになっている気がする。
「A？流石に夏祭りは無理？」
「無理じゃないよ、行こっか」
「よっしゃ。一応A受験生だから遠慮してんだぜ俺」
「うん、ありがとう。でも多分秋の推薦で決まりそう」
「ほんと？そしたらそれ終わったらもうちょっと会える？」
「‥‥会えるよ」
どうしてそんなこと聞くんだろう。
まるで仲の良い、両想いのラブラブカップルみたい。
私に会いたくて会いたくて仕方がないみたいに聞こえるよ。
そこまで考えて、ふと、私はどうなんだろうかと思う。
潤に会いたいだろうか。
この夏が終わって、秋が来て冬になって、その先の季節もずっと。
想像がつかないけれど、その時も隣に潤はいるんだろうか。
好きだなんて、お互いにいまだに言ってないのに。
いつまで私たちは。ううん、私はいつまで。
潤の手を離さないんだろうか。
じっと考え込んだ私の横顔を見つめる潤の瞳が揺れていることに、気が付かなかった。
「A‥‥」
「何？‥‥ふふっ、くすぐったい」
指先が私の耳を弄る。そのまま、顎、首筋って降りてきた潤の指が私の後頭部を攫う。
引き寄せられて厚みのある唇が重なって、目を閉じる。
キスをしながら仰向けに寝かされて、潤の片方の手が意思を持って私の腰のあたりを撫ぜるから身を任せた。
「窓、しめてね‥‥」
そちらを見もせずに窓を閉めた潤に強く抱きしめられて、その熱情に溺れていく。
潤にすっかり拓かれた身体は、彼の愛撫にどんどん高められてしまう。
私は何をしているんだろう。
受験生なのに。
推薦がほぼ決まりそうな私のつまらない言い訳。
潤に合わせてるんだよって、心の中で言い続けてきた私の、言い訳。
暖かくて熱くて優しくて。
きっともうこの手を離せないのは私の方。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
