【学パロ】君に胸キュン【詰め合わせ】(J.M) (ページ27)

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そうして始まった私と松本くんのお付き合い。
それは私の心の中にいつも不思議な影を落としていた。

一番最初に変だなって思ったのは、そもそも告白の時。
絶対私の事見てなかったって感じた。
というよりも、松本くんからは私のことを好きだなんて雰囲気を今まで一度だって感じたことがなかったから。
大体どれだけ上手に隠しても大なり小なりなんとなく「あれ？この人私の事？」って瞬間があるのに、カズのお友達として我が家に来るようになってからの三年間の間に、そんな瞬間只の一度もなかった。
よっぽど上手に隠してたのなら別だけど。

二つめにひっかかったのは、カズに「松本くんと付き合うことになった」って報告した時。
そりゃまぁ自分の姉と自分の親友が付き合うって微妙かもしれないけど、カズは動きを止めた後「マジですか‥‥そりゃ‥‥まぁ頑張って」と言った。
カズらしいような？って思った私は、その数分後に電話で何か言い争うカズの声を聴いた。
「俺の姉ちゃん巻き込まないでよ潤くん」
って、そう言ってた。
巻き込むってなに？それはこの突然のお付き合いのこと？
追及できないまま刺さったその棘は、今も残っている。

三つめは、現在進行形。
私が『松本くん』から『潤』って呼ぶようになって、彼が『Aさん』から『A』って呼ぶようになって。
夏の終わりから季節は秋になって、冬の初めにそういう関係になって、今まで。
私は一度も彼から『好きだ』って言われたことがない。
始まりのあの夜に、『俺と付き合って』って言われたっきりの、そういう関係。

だからなんとなく、私も言ったことがない。
というか、言えない。

だって好きじゃなかったから。
好きじゃないよ、潤のことなんか。

「ねえちゃん、吹きこぼれてるけど」
「っわぁ！あ、ああっごめん！」
物思いに耽っていたら味噌汁を作っていた鍋が見事に吹いていた。
呆れた顔したカズが火を止めてくれたけど、コンロ周りは結構ひどい有様になってる。ワカメが鍋に張り付いてるじゃん。
「考え事？気をつけてよ」
「まぁ受験生だしね」
「まさか。潤くんのこと考えてたでしょ」
「‥‥まさか」

我が弟ながらどうしてそんなに鋭いのかな。
なんでもない顔で笑い返せば、ちょっと上がった口の端をもにもにっと動かして「俺今夜はカニクリームコロッケが良いな～」なんてのたまう。
それアンタの好物じゃないでしょうが。

「残念、ハンバーグです」

「よっしゃ！」

ガッツポーズが可愛かった。