ウソツキの夜明け１ ページ21
本当のウソツキは誰なんだろう。
夕方から夜に変わっていく時間帯の、いちばん緑色と藍色が濃くなる時が好き。
夜から朝に変わっていく時間帯の、いちばん薄暗い空が白んでいく時が好き。
そんな時に、隣にあなたがいる。
端正な寝顔。
白い肌に影を作る、濃くて長い睫毛。
高い鼻筋と、厚ぼったい唇がちょっと開いて。
穏やかな寝息が静かな室内に響く。
キスしたいなって思うけど、私からは何もできない。
しちゃいけない。
解ってる。
いつも、胸が痛む。
いつまで、この関係が続くんだろう。
いつまで、こんな関係でいるんだろう。
弟の、親友の男の子。
二つ下の、まだあどけなさの残る寝顔を見つめて、私は今日も答えを出せないでいる。
「Aはもう進路決めたの？」
「んー？うん、決まってるよそりゃ」
「そっかぁ私はまだ悩んでるんだよね」
「どうすんの、一個レベル上げるの？」
「うーんって感じで。どっちにもやりたい学科あるんだけど、それなら挑戦してみないかって先生は言うんだよね、でも」
「不安だよねぇ」
「ねぇ」
高校三年生の春の終わり。
昼休みの教室で、一番の友人と話すことはこの先の進路の事。
受験生だなって気分を一番感じる進路指導は、来週から始まる。
「はー、ついこの間までまだまだだって思ってたのにね」
郁子の顔が、困ったように揺れている。
私は曖昧に頷いた。
窓の外の空は薄曇り。
春の空気は眠ったようにゆったりしていて、私も眠気に包まれている。
「A、寝てないの？」
「うー、うん？いや、今朝なんか早起きしちゃって」
「朝から勉強？」
「違うよ、でも朝活の習慣はつけたいなぁって」
「Aはいいなぁ、だってもう安泰でしょ？」
「何が」
「勉強はできるし、生徒会やってたから内申だっていいだろうし、なによりもあの彼氏！」
すっごいイケメンじゃん。いいねぇ〜。毎日一緒に帰ってるし、年下も可愛いよねぇ。
悪気のない言葉。
並べられたのは全部事実。
それなのに、私の胸はツキンって痛む。
「まぁ、うん‥‥かわいいよ」
そう返して、また見つめた窓の外。
ふわふわした綿毛が飛んでいくのが見えて、なんだか自分の心と重なった頼りなさ。
私、どこへ行くんだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
