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零れ落ちてしまいそう。
涙も。
言いたくない言葉も。
ものすごく近くで声がするのは、私と一緒に部屋に入り込んだ潤が、ドアに私を押し付けていわゆる壁ドンの姿勢になっているから。
短い距離だけど必死で走った私の息は上がっていて、耳元で聴こえる潤の呼吸も荒くって、こんな時なのに動悸が凄いことになってしまう。
ドキドキしすぎてきっと私は死ぬ。今、鼓動が止まってきっと死んじゃう。
「A、どういうことだ。雅紀が言ってたこと、なぁ」
怒ってる声。
でも必死な声。
ひどいよ。
フラれたのに、私に言わせるの？
告白もできないまま、私はあなたにフラれたのに。
「‥‥言え、ない‥‥」
「はぁ‥‥俺にフラれたって言ってたけど。なぁ、俺いつAのことフッた？告白された記憶もないんだけど」
どこか呆れた声音に胸がぎゅっと握りつぶされそうになる。
呆れてる。くだらないって思ってる。きっとそうだ。
そんな気持ちが胸の奥でぐるぐるして、どんどん気持ちが落ち込んでいく。
流したくないのに勝手にあふれて落ちてくる涙が、足元の床に小さな水たまりを作る。
瞬間、ふんわりあたたかくなって、潤のにおいが一段と近くなった。
「っ」
抱きしめられてるって気が付いたのは、耳元に今まで聞いたことがないくらい優しく切ない声で潤が
「泣くなよA」
って言ったから。
「潤‥‥うっ、うぇ‥」
「頼む、泣くなって‥‥お前に泣かれるのほんと無理」
「ご、ごめ‥‥迷惑だよね、ごめ」
「っ、ちげぇっての！‥‥好きな女に泣かれるのは、嫌なんだよ」
「――へ」
今、潤、なんて言ったの？
スキナオンナ？
好きな、女？
誰のこと？
えっと、え、わたし――
「‥‥なんかよくわかんないうちにお前に告白されてたんならびっくりだけど‥‥俺、ほんとにAのことフッた？いつ？」
「この、間‥‥花壇で‥‥」
「え？‥‥‥委員会の時？」
「そ、そう。だって潤が好きな子いるって、小学生のころから片想いだって言ってた‥‥」
「いや、待て。なんでそれでお前がフラれたことになんの？」
潤のきょとんとした顔。かっわいい！
でもそれどころじゃない。
どうして伝わらないのかな。
「だって、わたし、潤の小学生のころ、知らないよ‥‥」
「あ」
「だ、だからそれで、ああ私じゃないんだって思って‥‥っうぅー」
「ま、待って、泣くなって！」
潤のめちゃくちゃ焦った声がなんでだろう、心地いいの。
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
