恋の梅雨明け宣言１ ページ1
「A、帰るか」
緑化委員会の仕事が終わって、雑草や枯れた花を入れたビニール袋をゴミ捨て場に持っていくと、潤が大きく伸びをしながらこちらを向いた。
相変わらずのイケメンぶりに胸がトクンと小さな音を立てる。
「疲れたー」
「っていうか、暑いぃ」
「ほんとな、汗だくだよ。緑化委員ラクじゃねえな」
「ね、アイス買って帰ろうよ！」
「ジャンケンで負けた方が奢るのどうよ？」
「のった！」
ニヤッて笑う潤に、私もにんまり笑みを返す。
いつものやりとり、いつもの私たち。
おごるアイスはバニラバー70円、帰り道の駄菓子屋で。
高校二年生。
出会って五年目の初夏。
私は彼、松本潤に恋している。
片想いも四年となればいろんな意味で慣れたもので、潤の一挙手一投足にいちいちドキドキしていた時期は通りすぎた。
一緒にいることに慣れすぎて、今では一番の女友達のポジションに落ち着いてしまった。
嬉しくもあり、悲しくもある。
だってこの恋に、先が見えないから。
「コクれば良いじゃん」
「そんな簡単じゃないよ」
「好きですって言うだけでしょうが、何を躊躇ってんの」
ソファに座ってクッションを抱き締めた私の頭をポンと叩く大きな手。
ひとつ上の兄の翔が笑う。
私の長年の片想いを知ってる、相談相手。意見はいつも的確で厳しい。
でも、私を心配してくれているのが解るから、あんまり文句は言えない。
「卒業までずーっとそうやってんの？」
馬鹿なの？
私の分のコーヒーを入れた翔が一人分開けた隣に座る。
「‥‥卒業までには告白したいけどさぁ、なんっかもう、今更な感じが‥」
この生温いお風呂みたいな心地よい関係を壊したくなくて、今更なんて言い訳してるの、ちゃんと翔にはバレている。
「今更でも、伝えなきゃいつまでも今更以下じゃね？」
「うう‥‥」
「それに潤はモテるし？」
「ううう‥‥」
「お前が女友達としての地位を確立してたとしても、そんなもん彼女の前だと塵みたいなもんだぜ？」
「もぉイイ！」
翔の馬鹿！バカ兄貴！
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年5月28日 16時
