＊ ページ8
「潤くん、これ」
「俺の部屋の鍵。カードキー、使い方解る？」
「待って」
「いつでも来てよ」
「や、待ってって」
「俺居なくても来て。寝てても良いし、連絡もしなくて良いからいつでも来て」
「潤くん待って！ だ、だめ、じゃないけど、こんな合鍵‥‥もらえない」
「Aが貰わないんじゃ困る。ちゃんと持ってなさい」
「え、話聞いてた？」
「もうAにあげたから、好きに使って」
「ちょ、ちょちょちょ潤くん！？」
わざとAの話をスルーして、慌てふためく彼女にちょっとだけ笑う。
ようやく泣き顔以外の豊かな表情を見せてくれたことが嬉しくて、結局しっかり笑ってしまった。
途端、むっとしたように動きを止めたAがカードキーを両手で持って俺を見上げてくるから、その手を俺の両手で包み込んだ。
「Aに持っていてほしいんです。ほんと今までこんなことしたことないよ、俺」
「そうなの？」
「そりゃ色々あるからね。でも解ってほしいから。これが証明になるかはわかんないけど、Aのことそれだけ真剣だって」
「‥潤くん」
止まったはずの涙がまたぽろぽろ落ちてくる。
この涙はさっきと違って残しておきたくなる。
残らないって解ってるのに、Aがいつも追いかけてる化石みたいに、ずっとずっと未来まで残ってほしい。
だって嬉し泣きだって解る。
頬を染めて、困ったように照れたように。
もう拒否はせずに、宝物をいだくように胸に寄せて。
「ありがとう潤くん、気持ち、伝わりました」
「‥それは良かった」
そっと顔を寄せればAが瞳を閉じるのが見えた。
触れるだけのキスは涙の味。
柔らかく抱き寄せて何度も繰り返す、一か月ぶりのキス。
忘れそうだった、ぬくもり、やわからさ、におい。そのすべてを堪能する。
Aが差し出してくれた心の中の秘めてた部分、俺が暴いたそれをずっとずっと守っていきたい。
そんなにすぐに変わるとは思わないし、そこまで求めてはいないけど。
渡した合鍵を、いつかAが気兼ねなく使ってくれるように。
願って、腕の中の愛しい存在を確かめる様にその身体のラインを辿って、一か月ぶりの濃密な夜に二人して沈んでいった。
歯止めなんか疾うになくなってしまったから。
まさかこの後。
やっぱりおいそれと使えない、の一言の通りにAがほとんど合鍵を使わない日々が続くのは、流石に予想外でしたよ。
END
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お塩(プロフ) - 竜胆さん» メリークリスマスでっす！超短いですがイチャイチャさせました！命繋いでください‥！命大事に‥！ ちょっとした甘ったるい瞬間が良いんですよ潤くん似合う、照れながらやってくれ、と思います(笑) (2021年12月26日 2時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - ああ〜〜〜〜メリークリスマス！！！ありがとうございます！！お塩さんのJで助かる命がここにあります…助かる……。染み渡ります…最高……ありがとうございます…！ (2021年12月25日 19時) (レス) @page11 id: 9566f4d457 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ひなたさん» より仲が深まるどころかこれでようやく合鍵の二人になりました！前半ヒロインちゃん可哀想すぎるだろ、と自分でも思っていました‥しかも潤くんなんにも気づいてないという(笑)一途な潤くん本当に素敵ですよね、書いてて楽しかったです！ありがとうございます〜。 (2021年12月24日 6時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - 竜胆さん» 仕事、お仕事は大丈夫でしたか(笑) 情けないけど大丈夫でしたか‥ほっとしました。しかも可愛いとな！あんまり大きい喧嘩のなさそうな彼らの過去に色んなすれ違いがあるのは良いよなぁと思いながら、また色々書いていきます！ありがとうございます〜。 (2021年12月24日 6時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 喧嘩のお話、大好きです！（仲直りしてより仲が深まる前提で！）前半の終わりは切なくて、ドツボの切なさだったので何回も読み返しました。こんな拗れてどんな仲直りを…と期待していたらさすがの展開でした。情けなくても一途だからもう充分かっこいいです！ (2021年12月24日 1時) (レス) @page9 id: 607eb9cadf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年12月21日 9時
