チーフ ページ26
指定されたのは都内のレストランだった。
てっきり事務所に呼び出されて尋問でも受けるものだと思っていただけに、拍子抜けしてしまう。
平日の20時。
今日だけは絶対残業できません！！ と言い切って職場を後にしたAは一旦帰宅し、シャワーと着替えを済ませてここへとやってきた。
変な格好じゃ無いよね？ と一応自分の姿を見下ろしてから深呼吸。
(そうだ女は度胸！)
心の内で呟いて、そっとレストランの扉を押した。
案内された個室には、すでに櫻井翔が待っていた。
「こんばんは小宮山さん、今日はお時間を取っていただきありがとうございます」
向けられた穏やかな笑顔に一瞬ほっとするが、すぐ隣の見知らぬ男性も立ち上がって会釈をするので、Aは再び身構えた。
「こんばんは、初めまして。嵐のチーフマネージャーをしています、的場、と申します」
「初めましてこんばんは、小宮山Aです。ご丁寧にどうもありがとうございます。あの、生憎名刺を持ってきておりませんので‥」
的場と名乗った男から手渡された名刺を受け取り、荷物を入れ替えてきたことを後悔する。通勤バッグになら名刺入れが入っていたのに。
てっきり櫻井一人かと思い込んでいた自分のミスだとAは深々頭を下げた。
「ああすみません、そんなつもりじゃ。大丈夫です、仕事の場ではありませんから」
「‥‥すみません、てっきり櫻井さんお一人かと」
そう言って視線を櫻井に向けると、きっちりと椅子に座ったままの彼は肩を揺らして笑った。
「ごめんね、チーフがどうしてもって言うから」
「櫻井があなたと会うと聞いたものですから、私が無理にねじ込んでもらいました」
「そう、だったんですね‥」
「小宮山さんお食事は」
「こんな素敵なレストランなのに申し訳ないですが、食べてしまうと逆に落ち着かないので先にお話しからでよろしいですか？ もしお二人がお食事がこれからと言うなら、構いませんが」
「僕は大丈夫です」
「私もです。では、早速ですが」
そう言って的場はじっとAを見つめた。
視線の強さにたじろぎながらも、Aもその瞳を見つめ返す。穏やかな父親のような印象を抱かせる的場は、しばらくそうしてAを見つめていた。
「チーフ、見すぎじゃない？」
「えっ、そうか？ いや、小宮山さん目を逸らさない人なんだなと」
そのやり取りだけで二人の信頼のようなものが見える。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 513人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お塩(プロフ) - plut49plutさん» 『なんか、違うんだよな…』と私の中で疑問が生じてしまい完全に止まっています。修正して完成させたい気持ちはあるのですが、いつになるかと問われると正直わかりません。が実情です。続きを気にしてくださってありがとうございます！ (2023年2月10日 8時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - こんにちは、お塩です。こめんとありがとうございます！お返事遅くなってすみません。このお話、実は８割方出来上がっているんです…ただ、ハマりたてで彼らのキャラクターや性格をあまり知らないまま書いていたので、今になって（続く） (2023年2月10日 8時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
plut49plut(プロフ) - はじめまして。こちら「どうしてこうなった！」の更新予定はありますでしょうか。 (2023年2月4日 13時) (レス) id: 8fab10a4af (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - shiさん» shiさんコメントありがとうございます！お塩です。名字呼び捨てのヒロインって中々いないよなと思いつつ体育会系と言うか高校生みたいなノリもいいよなと思って始めてみました(笑)Ｓさんもまだまだ色々ありますので、是非楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2021年10月11日 11時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - 初めまして。主人公の松本呼びやSさんの行動が読んでいてワクワクしました！！次回の更新楽しみにしています！ (2021年10月10日 10時) (レス) @page23 id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年10月6日 1時
