秘密 ページ22
「あ、あの松本、私本当に何でもないんだよあの夜は」
「うんうんわかったわかった。取りあえずさ、今日本当はこのあと久々だしAさんちでまったりしたいなって思ったけど、用事出来ちゃったからまた今度にするよ」
「う、うん」
だからその、たった今思いつきましたっていう用事はなんなの、と聞きたくても聞けない。
なんだか怖い話が始まってしまいそうだから。
「じゃあ俺行くね、Aさんも気を付けて帰って、まだ朝みたいなもんだけど」
「うん、じゃあね、っ」
きゅ、と握られた指先。
名残惜しそうに何度かAの指先を撫でていく、松本の綺麗なのに無骨な指。
収まったはずの鼓動が再び逸りだすのを感じてAはそこから視線を外せなくなってしまった。
「Aさん、俺さぁ、解っちゃった」
Aに向かって呼びかけながらも、松本の視線は天井を見つめている。
どこかスッキリしたような顔つきで、しょーがないよなこればっかりは、と呟く。
「解っちゃった？ しょうがない？」
意味が解らず反芻すれば「オウムみてぇ」と笑われる。けれどその表情もまた優しい。
「松本どうしたの？」
「うーん。‥‥秘密！」
「秘密って‥なに、を？」
松本が何を言いたいのか解らない。
きょとんとも、不安とも。どちらとも言える表情で見上げると、松本がにっこり笑う。
「心配しないでよ、また連絡すっから」
「わ、わかった」
「Aさんからもしろよ？ なんでもいいから、会話してーもん」
「は、はいっ」
「ふふっ、何その返事」
柔らかく噴き出して、Aの頭をぽんと一撫で。
そうして颯爽と帰っていった松本を見送って、楓は呆然とその場に立ち尽くしていた。
「そ、そう、だ、布団干さなきゃ‥」
場違いなことを呟いてちょっと体を動かした瞬間、ふわりと立ち上る香りに数分前のことを思い出して身体も顔も熱くなる。
すっかり服についてしまった松本の残り香に、どうしていいのか解らない感情を持て余す。
「‥二駅くらいは取りあえず歩こう」
そうでないと！ これはダメだ！ ダメなやつだ！！
楓はぐっと拳を握りしめて、誰も居なくなったエレベーターホールを後にした。
この一連の出来事を櫻井たちに見られていなければ。
松本が、解らないままでいたのなら。
この先の未来は形を変えていたのかもしれない。
けれど。
動き出した物語は止まらない。
続く
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お塩(プロフ) - plut49plutさん» 『なんか、違うんだよな…』と私の中で疑問が生じてしまい完全に止まっています。修正して完成させたい気持ちはあるのですが、いつになるかと問われると正直わかりません。が実情です。続きを気にしてくださってありがとうございます！ (2023年2月10日 8時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - こんにちは、お塩です。こめんとありがとうございます！お返事遅くなってすみません。このお話、実は８割方出来上がっているんです…ただ、ハマりたてで彼らのキャラクターや性格をあまり知らないまま書いていたので、今になって（続く） (2023年2月10日 8時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
plut49plut(プロフ) - はじめまして。こちら「どうしてこうなった！」の更新予定はありますでしょうか。 (2023年2月4日 13時) (レス) id: 8fab10a4af (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - shiさん» shiさんコメントありがとうございます！お塩です。名字呼び捨てのヒロインって中々いないよなと思いつつ体育会系と言うか高校生みたいなノリもいいよなと思って始めてみました(笑)Ｓさんもまだまだ色々ありますので、是非楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2021年10月11日 11時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - 初めまして。主人公の松本呼びやSさんの行動が読んでいてワクワクしました！！次回の更新楽しみにしています！ (2021年10月10日 10時) (レス) @page23 id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年10月6日 1時
