楽しい夜に ページ39
意を決して声を掛ければ「Aさ―」と顔を上げた松本が、その端正な顔を驚きに染める。
大きなとび色の瞳が、更にくっきりと丸くなる。
「‥‥Aさん、今日、めっちゃきれい」
「はっ！？」
「そういうの持ってるならもっと着た方がいいと思う、凄く似合う。勿論いつものAさんも面白くって可愛いけど、今夜はなんか、うん、とってもきれいです」
言われる言葉を反芻する間も無く、Aの顔がどんどん熱くなる。
褒められ慣れてない上に、こんなイケメンにまっすぐ言われたら照れない方がおかしい。手の甲を頬に当てれば、しっかり熱い。
「あり、がと‥‥」
暗がりで良かったと思う。どんどん頬が熱くなるのが自分でも信じられなくて、Aは何度も瞬きを繰り返した。
こんな感覚久し振りで、まだ一滴も飲んでいないのに酔っぱらったみたいにふわふわしてしまう。
しかも相手はただの男ではなく、芸能界の第一線で大活躍するイケメンだ。
(‥‥生きて帰れるのかな、色んな意味で)
じゃあ行こうかと手を差し出した松本がめちゃくちゃ良い笑顔だったので、バレてるのを悟ってしまった。
「っていうかさ、俺さん付けやめてって言ったよね？」
「うっ‥‥言ったけど、でもじゃあ君付け？ 呼び捨て？ ‥‥ありえないでしょ」
絶対言われると思った。でも忘れててくれないかなーなんて淡い望みを捨て去ってAは唇を突き出して拗ねて見せた。
すると松本はきょとんとしてから口元を手で覆った。
「なんか、今日のAさんは色々反則」
「え？ なんで？」
「‥‥いいよ、君付けか呼び捨てしてみなよ」
「え、ええ！？ ‥‥松本、くん？」
「‥‥‥なんか部活の先輩みたい」
「はぁ？ ‥じゃあ、えっと、松本？」
語尾を上げて呼びかけてみると、目の前の彼はなぜかにっこり笑った。
その反応の意味が解らないAの手を取って、突然の出来事に狼狽え捲る彼女にもう一度笑った。とても楽しそうに。
「暫く呼び捨てにしてて！ なんか新しい扉開きそう、俺」
「それって大丈夫なの」
「さぁ？ でもマジで学生ん時みたいで楽しいから良いよ！」
「そ、そう？ なら、うん‥‥頑張る」
なにを？
ふはっ！ と噴き出した松本は、そのまま満足そうに何度か頷いて、混乱しきりのAを連れてドアに手をかけた。
「なにはともあれ、楽しい夜にしよAさん」
「ん！」
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん、一気読み疲れないですか？今後どんどん長くなる上に、どんどん何なのこの人たちってなるので(笑)ありがとうございますー！ (2021年10月3日 19時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 小出しもいいけど、一気に読めると尚嬉しいから 一気に出しても大丈夫ですよ~♪ (2021年10月3日 13時) (レス) @page29 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月29日 1時
