なんなの ページ22
ところが、そんな松本の落ち込みを他所に、Aは首を捻った。
「うーん、だって実際松本さんに色々聞こうと思えば聞けるなぁって思ったら、まぁいいかってなっちゃって。急がなくていいわけだし？」
「え」
「だって友達って最初はお互い何にも知らないところからじゃん。だから私も松本さんもそれで良いかなって思ったんだよね」
それは、いつでも松本と話せる距離感をAが感じているということ。そしてこの関係を好ましく思ってくれているということ。
他意も深い意味も無い事なのだろうけれど、松本の胸にやけに響いてむずがゆくなる。先ほど非常に恥ずかしい気付きを得たからこそ、尚更に。
「‥‥‥、‥いやほんと、なんなの」
「え？ ごめん聞こえなかった」
「いや良い。もうできるよ」
「えっ、あっじゃあお皿これとかどうかな」
流石にそこは手伝わせてとパソコンを閉じてAは席を立った。一人暮らしだからこそ、食器にはちょっとこだわって集めているのだ。
「はっ、これはペペロンチーノ！」
「俺イタリアン一番得意よ。絶対美味いから」
キッチンの隣で微笑みかければ、松本もニカっと笑う。まるで太陽みたいなイケメンスマイルに、Aは(目が、目がぁぁ)と叫びだしたいのをぐっと堪えた。
「Aさん食器おしゃれだね」
「えっ、松本さんにそう言われると自信ついちゃう！ 好きなんだよね、つい買っちゃう。できればもうちょっと自炊の比率を増やしたいんだけど、まぁ自分一人食べるなら何でもいいやってなって」
「えー、自分一人でも美味いもん食いたくない？」
「まぁ食べたいけど、それこそ前に連れってってくれたあのカフェみたいな美味しいのは、外で誰かに作ってもらって食べたいかな」
「そんなもんか」
「うん、って、あれ？松本さん食べないの」
ペペロンチーノが盛られたのは、一枚の皿。驚いて松本を見上げると「いや俺もう食べてるし」と返される。
「今日、仕事は」
「早かったよ。‥‥Aさんと連絡とってた時は休憩中で、それも夕方には終わってたし。飯食って、それからこっち来た」
「‥‥。そうなんだ」
なぜかそれ以上聞けない雰囲気を察知して、Aは「美味しそう」とテーブルに向かった。なんだろうか、一瞬だけ松本の空気がピリッとした気がしたのだ。
そう言えば何か忘れているような？ とAは考えて、目の前の美味しそうな誘惑に負けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん、一気読み疲れないですか？今後どんどん長くなる上に、どんどん何なのこの人たちってなるので(笑)ありがとうございますー！ (2021年10月3日 19時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 小出しもいいけど、一気に読めると尚嬉しいから 一気に出しても大丈夫ですよ~♪ (2021年10月3日 13時) (レス) @page29 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月29日 1時
