牽制が強い ページ46
先ほどまでの和気あいあいとした雰囲気がピリッと引き締まる。
櫻井の隣で、二宮は飄々としているがつかみどころのない笑顔を向けている。
(何しに来たって、そりゃそうか、私への牽制か)
内心でため息をつき、それこそ幼少期から高校卒業まで続けていた合気道の呼吸を思い出す。お腹の下に力を入れて、姿勢を正す。
先ほどまでの緩い雰囲気からの変化に、目の前の二人が「おや」という顔をした。
「小宮山Aさん、俺と同い年ですね。東京の某企業にお勤めで、最近は旅雑誌のコラムを任されてますよね。てっきり記者さんか編集さんかと思ったら、前職はちょっと違ったんですね。‥‥ご両親と弟さんと妹さんが都内にいらっしゃいますが、生まれは地方都市で引っ越しされたんですか。現在、あのマンションで去年からお一人暮らしですけど、――名義が違いますね」
つらつらと並べられるAの個人情報に愕然とする。というか、マンションの名義まで調べられるものなのかと若干の恐怖を覚える。
「まさかそんなところまで調べたんですか？ 正直いい気分はしません」
「すいません。でもまぁ俺らがじゃなくて、上が、ですけど」
上。それは彼らが所属する事務所のことだろう。
生き馬の目を抜く芸能界で、ジャニーズという集団の持つ力は大きい。若い女性を中心に絶大な人気を誇るアイドルグループをいくつも擁し、それゆえに様々なメディアに大きな権力を持っていると聞く。
櫻井と二宮のにこやかな笑顔の裏にこんな面があるのは、ファンならそれはそれで嬉しいだろうがAにはただの恐怖と疲労の素でしかない。
しかし、こんな対応もあるかもなと様々なことを考える妄想癖がAにはあるので、予想の範囲内ではあった。
正直こんなに調べられているとは思わなかったけれど。
一つ、深呼吸。
彼らが何を言いたいのか考えられることはいくつかあるけれど、一番なのはやはり松本に関わらないで欲しいということだろうか。
そもそもこっちは関わり合うつもりは無かったのに、まさしく嵐のように巻き込まれまくっているのはAの方で、巻き込んでくるのは松本なのだが。
そう言ってやりたい気持ちをグッと飲み込む。
そう、感情的になってこの雰囲気に飲まれるわけにはいかない。
Aはまっすぐに櫻井を見つめた。
暫くそうやって二人で睨み合うような状況に、二宮が「たこわさからっ」とわざと空気を破っていく。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん、一気読み疲れないですか？今後どんどん長くなる上に、どんどん何なのこの人たちってなるので(笑)ありがとうございますー！ (2021年10月3日 19時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 小出しもいいけど、一気に読めると尚嬉しいから 一気に出しても大丈夫ですよ~♪ (2021年10月3日 13時) (レス) @page29 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月29日 1時
