◆交差点 ページ32
「お疲れ様でしたー」
「また月曜に」
「気を付けて帰れよ」
「家に着くまでが飲み会です！」
三々五々に挨拶を交わして、それぞれが帰路につく。
お酒が入ってほろ酔いで心地よい気分のままAはのんびり歩きだした。
その背に、「小宮山、途中まで方向一緒だろ」と先輩社員が声を掛ける。
「田沢さんあそこのスーパーまでですか？」
「そ、俺あそこを右」
「私はまっすぐです」
「割と生活圏近いのに会わないな」
「まぁそんなもんですよ」
お疲れ様と挨拶をしながら、二人で歩き出す。
9月の夜の風は涼しくて、日中の暑さを忘れさせてくれるものだった。
仕事の話や学生時代の話をしながら、酔い覚ましもかねて夜風に吹かれていると、雲が切れて月が顔を覗かせた。
「わ‥きれい」
辺り一帯が淡い月灯りに照らされて明るくなっていく。
「すげぇ、満月じゃなくてもこんだけ明るいんだな」
「昔の人が月灯りで勉強したとか夜道を歩いたとか、ちょっとわかる気がします」
「どんだけ昔なんだよ」
田沢が楽しそうに笑うので、Aもちょっとだけ微笑んだ。
「あのさぁ小宮山」
「はい？」
分かれ道のスーパーの手前で真っすぐに進もうとするAに田沢が声を掛ける。
振り返ると、彼は何か言いよどむように自分の後頭部をかいた。
「田沢さん？」
「あのさぁ‥‥その、出し巻き卵すっげぇうまかった」
「えっ、本当ですか、ありがとうございます！ 練習した甲斐がありました！」
褒められたのは純粋に嬉しかったが、同時に思い出すのは五郎の顔だ。
別に誰かのためなんかじゃ無かったのに、その誤解を解くことはできないまま。
「‥‥小宮山？」
笑ったのに黙り込む。
そんな彼女に田沢は大きく深呼吸をしてみせた。
「小宮山のメシ、毎日食べられる奴は幸せなんだろうな」
「え？」
「俺、すっかり胃袋掴まれた気分」
「田沢さ」
「俺さ、小宮山のことが――、小宮山？」
この流れで何を言われるのか理解する前に、Aの視線は田沢の後ろを捉えていた。
交差点の向こう、信号機に阻まれた先に立っているのは学ラン姿の五郎。その恰好で彼が高校生だということをAに否応なしに突き付ける。
そして――
「うわ、男も女も美男美女のカップルだな、勝ち組高校生か」
Aの視線の先を振り向いた田沢の呑気な声が、なぜか胸に痛い。
(‥‥五郎、彼女居たんだ)
その事実が圧し掛かる。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん、多分潤くんフッツーにドン引くと思うんですけど、やっぱり自分だけをずーっと推してるっていう激しさにニヤけてると思います。いやぁ余りにも会見の潤くんがカッコよかったのでこーゆーヒロインちゃんもそりゃ生まれますよ仕方ない仕方ない(笑) (2021年10月28日 12時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 主人公ちゃん笑える…笑笑 あの潤くんがタジタジとか面白い…笑笑 (2021年10月28日 11時) (レス) @page45 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - さちこさん» さちこさんコメントありがとうございます！もう想像だけは逞しく広がりまくってます！事件の事実以外に深山が知りたがる存在がヒロインちゃんだといいな！と。まだ書きますホント妄想は無限ですね、お互いニヤニヤ楽しみましょう〜！ (2021年10月16日 16時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
さちこ(プロフ) - 深山先生の幼馴染み！何ですか、その楽しい設定！！読みながらニヤニヤしちゃいましたよ☆いやぁ…妄想は無限ですね(笑) (2021年10月16日 15時) (レス) @page35 id: 037683b6b9 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ぺーさん» ぺーさんコメントありがとうございます！妖怪物良いですよねほんっとに大好きで毎回妄想しちゃうんです。ぺーさんの頭の中で彼らが元気なら良かったです！まだまだ続けますとも！妖怪物は毎回壮大になってしまいます(笑)是非またいらしてください！妖怪談義しましょう！ (2021年9月11日 17時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月11日 1時
