＊ ページ43
会場はバーを貸し切っていた。
終盤、小宮山は一人でカウンターに座って、マスターと何か喋りながら酒を飲んでいて、俺は迷うことなくそこへ向かう。
「小宮山、隣良い？」
「えっお、おお松本〜。まだ居たんだ？ 明日仕事だいじょーぶ？」
まだ居たんだって、お前ね。
俺はお前と話をしようかなって機会を伺ってたっつうのに。
いや、何を話すんだって話だけどね。
「結構酔ってんね、お前。大丈夫、俺は明日は昼からなの」
「そうなんだ、でも忙しいよね、おめでとう〜！！」
「なにが」
「え、ええ〜？ なんかもう、色々？」
そう言った表情に、ふと。
薄暗いバーで、酒も入ってるから。でも。
「お前顔色悪くないか？」
彼女が、ピクリと反応したのには気付かなかった。
「‥‥飲みすぎ！？ かな！？」
「知るか。もう止めとけよ。てか‥‥なんか痩せたよな」
「ダイエットです！！」
「それくらいで良いんじゃない？」
「ええーだって、松本の周りの女の人はもっとみんな痩せてて素敵デショ？」
そう言って、カクテルを一口。
もう止めろって言ったのに止めないで、けらっけら笑って。
本気なのか嘘なのかわからなくて、悔しい気持ちがあるから俺も茶化す。
「まだ俺のこと諦めてなかったのか」
「あはは。諦めようとしたし諦めたんだよ〜でも、でもね‥‥顔見ちゃうとやっぱり好きってなっちゃうの！」
「ありがとう」
「‥‥なに、私のこと好きになっちゃった？」
驚いた後おどけて見せる君が、どんな気持ちで居たかなんて。
この時の俺は何ひとつ想像すらしていなくて。
ただ、もう一度軽口を叩き合える時間が心地よくて嬉しくて。
小宮山の表情にも声にも、その瞳が揺れていたことにも、何にも気づいていなかった。
「なってねぇです」
「ひどい！ もう20年くらい好きなのに！」
「愛がやべぇけど、彼氏いないわけ？」
「いたよ！ 居ました何人か！ 今は、居ないけど‥‥」
「ふーん」
俺のことを好きだって気持ちを抱きながら他の男と付き合って、多分身体の関係だってそりゃあっただろうコイツの恋の話を初めて聞いた。
なんで面白くないなんて思うんだろうな。
ホントに俺は勝手だ。
男ってこんなもんだけどさ。
グラスを煽って残った酒を飲み干すと、「松本」って。
やけに静かな、柔らかい声に思わず振り向くと――
「っおま、」
「んっふふ！ 初めて奪っちゃった！」
「信じらんねぇ‥」
それが俺たちのキス。
最初で、最後の。
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ゆかり - 潤君素敵です (2022年9月11日 17時) (
レス) @page44 id: c109875420 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いくさん» いくさんコメントありがとうございます！えっえっニノ担さんですか！私はＪ担推しでニノを宗教だと思っている人間ですので、ニノ担の方に好きになってもらえるなんて最高です！！ありがとうございます！！別ページに幸せな結末もあるのでもし宜しかったらそっちも是非！ (2021年10月31日 20時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - 悲しくて泣きながら読んでました。お塩さんのお話し読んでから、ニノ担でしたが、Jが大好きになっちゃいました。 (2021年10月31日 19時) (レス) id: b9250881d5 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - りえさん» りえさんコメントありがとうございます！すみません、すぐ分かるあそことは『世界は二人のために色づいて』というハピエンページです！ハピエンページということは、そういうことです！是非是非いってらっしゃいませです！！ (2021年10月31日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - くるしい、かなしい、と思いながら読みました。でも「多分すぐわかるあそこ」が分からない…どこなのでしょう。 (2021年10月31日 17時) (レス) @page29 id: 99c0de9694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月1日 22時
