＊ ページ40
潤が小さく呟く。
「俺さ、もっと地獄になると思ってたんだ」
私もだよと頷いた。
異母姉弟が愛し合う世界。血の繋がった二人が、子供をつくる行為を繰り返す世界。
誰かに知られたら、引き離されるんだろう。
絶対に許しても認めてももらえない関係。
誰にも言えない関係。
「でも、蓋開けたらなんだろうな‥‥そりゃ今だってバレたくねぇからめちゃくちゃ気を付けてるけど」
「うん」
「俺はもうAのいない生活は考えられないから」
潤の大きな掌が頬に触れる。
ぬくもりに泣きそうになって、その手を両手で包み込んだ。
「絶対離す気も別れる気も無いから」
「‥‥ん、私もだよ」
「Aいないと、俺にとっては世界に意味なんてない」
「私も――」
安心したように微笑む、少年みたいな幼さで。
やがてまどろみに落ちていく端正な顔を優しく撫でて、私は潤を抱き寄せる。
恋に堕ちた日を覚えている。
あの日の日差しの強さ、肌を焼く熱さ、風の音と匂い全部を覚えている。
私たちが背負うものはなんなんだろう。
時間と景色はどんどん過ぎ去って、私たちは大人になってあの頃よりずっとずっと自由になった。
父と義母が十何年も耐えたように、私と潤も耐え忍ぶんだろうか。
いつか、祖父母を失った私にようやく義母と潤を紹介できた父のように、私たちは互いを誰にも紹介できないけれど。
望んでいるわけじゃない。
親にはいつまでも元気でいてほしい。
孫を抱かせてあげられないから、せめて二人は二人で幸せでいてほしい。
私たちは幸せだから。
一緒に居られることが幸せだから。
「A、今年の俺の誕生日どうする？」
「勿論休み貰ってるよ！ 次の日も！」
「えらい、よくできました。どこへ、行こうか」
「んー、そうだなぁ‥」
私たちは、未来の話をする。
許されない恋の、その先のことを想う。
「明日、また来てよ」
「入りびたるとバレちゃうよ？」
「いいよ、そしたらどこ逃げる？」
「！ どこへでも」
そんなこと、本当はできなくてもいい。
誰にも祝福されなくていい。
愛されなくていい。
それでも、私たちは幸せだから。
あの夏の日に掛けられた呪いみたいな恋の魔法に、ずっとずっと囚われて。
END
フラグにしようか迷って、そこメインじゃないしと思い返した異母姉弟もの。
書いてみたら予想外に前向きな二人で、あれこれ切ないけど悲恋にはならないね？ って首を捻ってます(笑)
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ゆかり - 潤君素敵です (2022年9月11日 17時) (
レス) @page44 id: c109875420 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いくさん» いくさんコメントありがとうございます！えっえっニノ担さんですか！私はＪ担推しでニノを宗教だと思っている人間ですので、ニノ担の方に好きになってもらえるなんて最高です！！ありがとうございます！！別ページに幸せな結末もあるのでもし宜しかったらそっちも是非！ (2021年10月31日 20時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - 悲しくて泣きながら読んでました。お塩さんのお話し読んでから、ニノ担でしたが、Jが大好きになっちゃいました。 (2021年10月31日 19時) (レス) id: b9250881d5 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - りえさん» りえさんコメントありがとうございます！すみません、すぐ分かるあそことは『世界は二人のために色づいて』というハピエンページです！ハピエンページということは、そういうことです！是非是非いってらっしゃいませです！！ (2021年10月31日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - くるしい、かなしい、と思いながら読みました。でも「多分すぐわかるあそこ」が分からない…どこなのでしょう。 (2021年10月31日 17時) (レス) @page29 id: 99c0de9694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月1日 22時
