＊ ページ34
「A」
「うん？」
「苦労ばっかりかけるけど、後悔もさせるだろうけど‥‥だけど俺はもうAの手を離さないから」
「‥‥うん」
「だから、ずっと俺の傍に居て、死ぬまで」
「‥‥うんっ、潤もずっと私の傍に居てね、死んでも」
ぎゅうと抱き合って、爽やかな朝の光の中で何度目かわからないキスをする。
涙と罪と背徳にまみれた、甘美なキスをする。
美しい、世界で一番美しくて儚くて許せなかった花嫁姿を思い出す。
自分と彼女以外の全てにざまぁみろって気持ちで、俺じゃない男と誓いのキスを交わしたAを見つめたあの地獄のような時間。
それでもAは俺を見つめていた。
世界で一番美しくて、儚くて、陳腐な式を、俺たちの心が流した血の涙で彩ってから、二年。
愛は死ななかった。
愛は涸れなかった。
だけど、この愛は。
腐ってはいないだろうか。
例えそうだとしても、この世の何よりもこの愛はきれいだ。
もう二度と、あのサファイア色に染まる夕景を見られなくても。
「保険証が困るよね」
「風邪ひかねぇようにしないと」
「通帳」
「しばらくは用心しないとな」
「フフッ、神田川みたい」
「ごめんな、イイとこのお嬢さんに」
「潤の奥さん以上にイイとこなんて無いよ」
手を繋いで歩く、見知らぬ街。
地元よりもずっと都会で、人が多くて、だからこそ紛れて。
もう少し季節が流れたら引っ越して、また違った街へ行こう。
将来のことは、もう少し先に置いて。
良いんだ、二人なら。
こんな愛だって、良いんだ。
二人なら、どこにいても、どんな形でも。
背負って、抱きしめて、この愛を手放さない。
「潤、今日はなにしようか」
Aが笑う。嬉しそうに、楽しそうに。
俺と繋いだ手を揺らして。
攫いに行くよって俺のたった一言にあっさり頷いて。
本当に攫われてくれたAは、泣きながら笑ってた。
人生で一番最高の気分って、俺にキスをしながら。
親父が死んで、母親がすべてを金に換えて。
友人たちが、もう良いじゃんって俺を崖から突き落とした。
その下で、両手を広げて待っていてくれたAを、強く強く抱きしめる。
俺らの愛は、罪になった。
Aはまだ相手の男と結婚状態だし、いつかはこの逃避行が終わるかもしれない。
Aを抱いて、空白を埋めて、悲しみの記憶を塗り替えていくたびに。
神様に背を向けた俺たちに、サファイア色の記憶が手を振っている気がする。
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ゆかり - 潤君素敵です (2022年9月11日 17時) (
レス) @page44 id: c109875420 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いくさん» いくさんコメントありがとうございます！えっえっニノ担さんですか！私はＪ担推しでニノを宗教だと思っている人間ですので、ニノ担の方に好きになってもらえるなんて最高です！！ありがとうございます！！別ページに幸せな結末もあるのでもし宜しかったらそっちも是非！ (2021年10月31日 20時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - 悲しくて泣きながら読んでました。お塩さんのお話し読んでから、ニノ担でしたが、Jが大好きになっちゃいました。 (2021年10月31日 19時) (レス) id: b9250881d5 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - りえさん» りえさんコメントありがとうございます！すみません、すぐ分かるあそことは『世界は二人のために色づいて』というハピエンページです！ハピエンページということは、そういうことです！是非是非いってらっしゃいませです！！ (2021年10月31日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - くるしい、かなしい、と思いながら読みました。でも「多分すぐわかるあそこ」が分からない…どこなのでしょう。 (2021年10月31日 17時) (レス) @page29 id: 99c0de9694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月1日 22時
