＊ ページ24
笑っていたAちゃんが涙を拭って顔を上げて、動きを止めた。
俺はAちゃんと隣合わせたテーブルで通りに背を向けていた。
Aちゃんは通りを向いていた。
その唇が戦慄く。
音にならない声を漏らして、小さく落とされたその響きは、彼女が、彼が、ずっとずっと望んでいたものだった筈なのに。
「――――潤」
振り返った俺の先、ほんの数メートル向こうの歩道に立ち尽くして俺らを見つめている潤くんの、その瞳が。
傷ついて、揺れて、怒りを滲ませて――逸らされた。
視線も足も、潤くんが一気に遠のいていく。
「潤、待って」
Aちゃんの声がか細く落ちる。
だけどきっと潤くんには届かなくって、あっという間に遠ざかる背中に俺も言葉をかけ忘れた。
違う誤解だって言わなきゃと急いで立ち上がる。
「にの、二宮さんどうしよう私、私、潤にあんな顔っ」
「大丈夫、とりあえず俺が追いかけるよ、ちゃんと説明しますし」
「‥‥」
「そんな不安そうな顔してないで、二宮さんからの連絡を待ってなさいって！」
「、――はいっ」
そう頷いたAちゃんの瞳は何かの覚悟を決めたように煌めいていた。
今すぐ潤くんに見せたくて、傷つけすぎた二人の想いがちゃんと向かい合って重なるように祈らずにはいられない。
そんなに俺ロマンチストでもないけど、潤くんとAちゃんには望んじゃうんだよね。
だってさ、12年って長いよ。
恋人ならとっくに結婚してるか別れてて、友情だって中々続かない長さを、あの距離感でずっと並んでいたんだって、凄いって。
遠回りばっかりで近道なんて無くてどこに行きつくかも分かんなかった二人だから、今度こそ一緒の道の上を行けますようにって。
だけど俺は結局Ｊを見つけらんなくて。
電話にも出てもらえなくって。
途方に暮れつつどうしようかなって考えていた時に、まさかAちゃんがあんな行動に出てるなんて思いもしなかった。
こんな時のＪの行動は大体二つで、家に帰るか飲みに出る。
後者を選んだＪが酒に任せて適当に女の子をひっかけて、名前も忘れちゃうようなモデルかタレントの子の腰を抱いたままマンションに帰宅したのを、待ってたAちゃんは目撃して。
何なら目も合ったのに無視されて、そうして――
そうしてその女の子が数時間後に帰っても、ずっと。
潤くんを待ってた。
必死で掛けた、折り返されない発信履歴を見つめて。
ホント二人とも馬鹿だよね。
(続く)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆかり - 潤君素敵です (2022年9月11日 17時) (
レス) @page44 id: c109875420 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いくさん» いくさんコメントありがとうございます！えっえっニノ担さんですか！私はＪ担推しでニノを宗教だと思っている人間ですので、ニノ担の方に好きになってもらえるなんて最高です！！ありがとうございます！！別ページに幸せな結末もあるのでもし宜しかったらそっちも是非！ (2021年10月31日 20時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - 悲しくて泣きながら読んでました。お塩さんのお話し読んでから、ニノ担でしたが、Jが大好きになっちゃいました。 (2021年10月31日 19時) (レス) id: b9250881d5 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - りえさん» りえさんコメントありがとうございます！すみません、すぐ分かるあそことは『世界は二人のために色づいて』というハピエンページです！ハピエンページということは、そういうことです！是非是非いってらっしゃいませです！！ (2021年10月31日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - くるしい、かなしい、と思いながら読みました。でも「多分すぐわかるあそこ」が分からない…どこなのでしょう。 (2021年10月31日 17時) (レス) @page29 id: 99c0de9694 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月1日 22時
