＊ ページ14
『あの、あのさ‥‥っ、彼女さんとうまくいってる？』
「――は？」
『や、ごめんあの、ちょっと気になって。そろそろ三か月経つしどうかなって』
こんなこと今まで一度もAから聞かれたことが無かったから面食らってしまう。
何言ってんのコイツって気分だし、多分俺の表情もそんな感じなのだろう。ちらりと視線を向けるとニノと目があった。
「どうかなって‥何言ってんの？」
『だからごめんって。でも‥その様子だとうまくいってるんだよね』
「ああ、まぁ」
『それなら良かった』
本当に安堵したような声音。ついたため息すら温かい温度を纏っているよう。
今目の前にAがいて、ほっとした顔をしているのが簡単に想像できる。
想像できるのに、胸のどこかがチリチリと火花を散らす。
「おいなんなの？ 本題言えよ」
『あー‥あのね、あの‥‥私もう潤の部屋行けないから』
「は？」
『仕事で福岡行くの』
「――え」
あまりに突然の申し出に感じたけれど、三か月連絡を取っていなければ突然でも何でもないのかもしれない。
現にAの声は落ち着いていて、なんの惑いも無いように聞こえる。
「――出張ってこと？」
『‥‥いつ帰ってくるか解らないから、もし、これから潤が‥‥縁起でも無くて悪いけど、彼女さんと別れたとしても私は行けないから、‥‥先に伝えておこうと思って』
「な、」
なんだよそれ、何の気づかいだよ。
言葉は音にならなかった。
Aが一人じゃないと解ったから。
彼女の後ろから、彼女の名前を呼ぶ男の声が聴こえたから。
『潤？ あのごめんね、急に決まったから』
「A」
『うん？』
今、一人？ そこに誰かいる？
そいつ、お前の何？
言いたい言葉が、訊きたいことが、喉の奥でぐるぐるつっかえている。
『潤？』
いつもと同じ。
フラットでニュートラルなAが、俺を呼ぶ。
その声は優しくて、耳に馴染む。
どれだけ荒れても、疲れても、どうしようもなく落ち込むときも、いつも俺を俺に導いてくれる。
俺の――
俺のじゃなくて、他の誰かのなのかもしれない。
幼馴染ってだけで。
俺が良いように使って、Aがいつも優しいから甘えて、調子に乗って。
恋人でも何でもないから、行くなも言えない。今傍に居る誰かについて問い詰めることもできない。
「‥‥いつ、行くんだよ」
『‥二週間後』
「それまでに一回会える？ 予定教えて」
『うんいいよ』
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ゆかり - 潤君素敵です (2022年9月11日 17時) (
レス) @page44 id: c109875420 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いくさん» いくさんコメントありがとうございます！えっえっニノ担さんですか！私はＪ担推しでニノを宗教だと思っている人間ですので、ニノ担の方に好きになってもらえるなんて最高です！！ありがとうございます！！別ページに幸せな結末もあるのでもし宜しかったらそっちも是非！ (2021年10月31日 20時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - 悲しくて泣きながら読んでました。お塩さんのお話し読んでから、ニノ担でしたが、Jが大好きになっちゃいました。 (2021年10月31日 19時) (レス) id: b9250881d5 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - りえさん» りえさんコメントありがとうございます！すみません、すぐ分かるあそことは『世界は二人のために色づいて』というハピエンページです！ハピエンページということは、そういうことです！是非是非いってらっしゃいませです！！ (2021年10月31日 18時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - くるしい、かなしい、と思いながら読みました。でも「多分すぐわかるあそこ」が分からない…どこなのでしょう。 (2021年10月31日 17時) (レス) @page29 id: 99c0de9694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月1日 22時
