＊ ページ17
頬を滑っていた潤の指先がAの濡れた唇に触れる。
「あっ‥」
「今すぐ奪いたい、A」
ふっくらとした赤い唇がしなやかに動く。
確かめたい。
まだ一度も許していない、この距離を埋めたい。
「――潤っ」
もう片方の手で抱き寄せられて、アッと思う間も無くすぐ目の前、吐息が触れ合う距離に潤の彫刻みたいに端正な顔が迫る。
その力強く美しい瞳には、Aに向けられる確かな情欲の炎が燃えている。
潤から立ち上る気配は濃密で官能的で、まるで劇薬みたいなフェロモンにあてられたAは簡単に腰が砕けそうになってしまう。
よろけて、まるで抱き合うように潤の胸に顔を当てる。
「っ、ごめ」
「いいよ、マジでめちゃくちゃキスしたいけど、後ろにいるのお前の同僚だろ？」
ちら、とその鋭い視線が後ろに流れて、またすぐにAを見つめてくる。
Aは、自分の顔が燃えそうに熱いと感じた。
きっと真っ赤になって涙目で、ああ。
「その顔、誰にも見せらんねぇな、‥最高にソソる」
そう言って捕食者みたいな勝利の笑みを見せた潤に、Aは震える吐息で小さく囁いた。
――はやく確かめて、潤を感じたい
そしてその願いは、あっさりと叶えられてしまう。
まさに急転直下。
繋がれた指先、腰に添えられた大きな手のひら、髪の毛への優しいキス。
箱の中で吹き荒れる様々な嵐からAを守るように外に連れ出して、潤の車の中で、初めて深く深くキスをした。
足りない足りない、全然満たされない。
今すぐほしい、早くはやく、ハヤク、すべてを。
お互いの髪をぐしゃぐしゃに指先で乱して、漏れる吐息すら逃したくなくて必死になる。
潤の肉厚な舌がAの喉を食んで、舐めて、まるで草食動物の断末魔みたいに震える悲鳴を上げさせるから、もっと離れられない。
止められない。
この夜の狭間に、二人で紛れ込んで。
誰の目にも触れずに、境界もなにもかも全部取っ払って。
二人、真っ逆さまに落ちていく先は、二人で創る極上の――
重なった影が、何度も近づいては離れて、揺れて、揺れて、揺れて。
真夜中を超えて、いつまでもお互いの鼓動に酔いしれて、濡れて、濡らして。
夜の奥深く。
あたたかな海に放りだされたように二人きり揺蕩って。
辿り着く岸辺も見つからない。
息の仕方を忘れて、喘いで、啼いて、求め合って。
夜明けは遠い。
それでも二人はいつまで離れられなかった。
『夜の影』
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ありがとうございます！って、ゆぃさんまで何を仰る！(笑)私ニューヨーク行ったことないので‥‥(笑)でもタイムズ・スクエア前に立たせるだけで絵になる潤くんですよね、それを見たいです(笑) (2021年9月28日 11時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 完結お疲れ様でした~ NY編…いいです~♪ (2021年9月27日 13時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - さちこさん» さちこさんコメントありがとうございます！ほんっと格好いいですよね見事に落ちました(笑)全曲は流石に書けませんでした、そこまでネタが思いつかなくて‥。えっ、NY番外編っ！？えっそんなそんな(笑)でも少し妄想しちゃいました、タイムズスクエアの二人ですね成程！ (2021年9月25日 21時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
さちこ(プロフ) - お塩さん、完結おめでとうございます！こちらのお話も大好きです♪untitled、ほんとカッコいいですよねぇ…全曲のお話書かれるのかと勝手に思ってたので、完結って見て「えぇ( ﾟДﾟ)」ってなっちゃいました(笑) NY番外編、気が向いたらお願いします(笑) (2021年9月25日 8時) (レス) id: 037683b6b9 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん返事遅くなってすみません！！ 同僚はものの見事に当てウマですほんとすみませんって気分になりつつ、あれはもう潤くんのイケイケ具合を楽しんで頂ければオッケーです！！ ね、どう思ったんでしょうかね‥(笑) (2021年8月28日 2時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月11日 4時
