名前 ページ26
「え、サイン？ くれるの？ 松本さんが？」
会計待ちの時に松本にちょいちょいと手招きされて、彼女はレジに近寄っていく。
差し出された用紙と松本を交互に見つめれば、彼からは失笑。店員からは苦笑。
「えっ違うの？」
「落ち込むのかよ、欲しいの？ 俺のサイン」
「いえ別に」
「おい。って、違うここにサインして。そうすればおねーさんも会員」
「――え」
今さらりと凄いことを言わなかったか。
思わず松本を見つめる。彼は「ん？」なんて首を傾げている。
超ド級の一般人の自分が、このような高級会員制カフェしかも夜はバーの会員になって、このお店に何のメリットがあると言うのか。
彼女のハトが豆鉄砲食らったような顔に、松本は今度こそ噴き出した。
「これで夜も来れるよ。酒も料理も美味しいから来てよ」
「お待ちしております。松本様のお連れ様となれば是非に」
にっこりと微笑んだ店員の洗練された物腰にさらに腰が引ける。けれど有無を言わせない圧を感じる。
書かないわけないよな？ と松本の目が語っているのを、彼女はしっかりとキャッチした。
「‥‥」
観念して書き込む。
名前と連絡先を記入して手渡すと、松本が「あれ？」という。
「なに？」
「おねーさんって、こーゆー名前なんだ」
「あれ、言ってなかったっけ」
「ごめん俺聞いたことなかった。ずっとおねーさんって呼んでたわそう言えば」
「ほんとだ」
「‥‥」
「‥‥ぷっ」
顔を見合わせて、たまらなくなって笑いあう。
嘘だろ信じられないって肩を震わせて。
名乗りもしてなかったのに、なんだろうこれ。本当に気安い友達になったみたいで、心の底から、この世は奇想天外摩訶不思議だと彼女は噛みしめた。
「なぁ、そしたらさ。Aさんって呼んでいいですか？」
「えっと、はいどうぞ」
「じゃあAさんも俺のこと」
「っ、ごめん、私恋人以外は名前で呼ばないって決めてるの」
「えっ。そ、なの？」
思いの外、きつい声が出たなと唇を噛み締める。
言われた松本は、その内容に驚いたようで彼女の声音にまでは気付いていないようだった。
「だから、松本さん、で。ごめんね、そこだけ堅苦しくて」
「いや、いいけど。‥まあじゃあ宜しく」
「えっと‥‥よろしく？」
よろしくする今後があるのかと驚く。
松本はそんなのお構い無しに握手を求めてきて、握った手をぶんぶんと振った。
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お塩(プロフ) - ひーちゃんさん» ひーちゃんさん、コメントありがとうございます！えっ、ヒーちゃんさんも夢落ち潤担さんですか！？そんな偶然があるとは驚き過ぎて笑ってます。続きは実はできてるので、修正しつつそのうちページ作りますね！ゆっくりお待ちください！ (2021年9月22日 15時) (
レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
ひーちゃん(プロフ) - お塩さま、作品を楽しく拝見させて頂いております。夢堕ち潤担！私もです( ・∀・)ﾉ﹛ﾊｰｲ!何だか嬉しく思いました。続きも心待にしております。 (2021年9月22日 2時) (レス) @page28 id: af081d03e4 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさんありがとうございますっ！私の中ではむしろ一番古い話なので不思議な気分です(笑)創作意欲ばっかり溢れて実際は空回りですよ‥‥ふへへ。いつもゆぃさんに励まされてます！ほんとにありがとうございますー！！ (2021年9月1日 12時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - - ここにきてまさかの新作とは！驚きです！！お塩さんの書きたい意欲が凄い♪無理しないでくださいね~ (2021年8月30日 14時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月7日 1時
