恩人 ページ25
「敬語。俺とっくにタメ語にしてるし、なんならおねーさん年上なら尚更フツウにしてよ」
松本からの申し出はもっともな気もしたが、彼女にとってはハードルが高い。
だっていくら年下と言え、相手はスーパー有名人なのだ。
「いやでも恐れ多い」
「何言ってんの、俺の恩人じゃん」
「そこまでは」
恩人と言われて彼女は目を瞠る。
目の前の松本潤は真っ直ぐな瞳を向けている。背もたれに預けていた背筋を伸ばして、改まったように口を開く。
「恩人だよ。おねーさんさ、あんな真夜中の路地に行き倒れてた不審者の俺を助けてくれて、あんなことできる人そんなにいねぇよ。自分の服まで汚して。‥だから本当に、ありがとう」
今までで一番真面目で、一番格好いい顔をして、ドラマかなって台詞をさらりと告げる松本に、彼女の動きが止まる。
「あの状況だったらきっと誰だって――」
助けたと思う。
そう言おうとした言葉は、まっすぐな松本の視線に阻まれた。
「おねーさんあの日、超眠くて疲れててさ、自分のこと一番に優先したい金曜の真夜中にさ。‥ほんとお人好しで心配になる」
「私そんなにいい人じゃないんだけど」
「俺にとっては良い人だった。だから、ほんと気にしないで敬語もやめて普通に喋ってほしい」
変なの、と思う。だってまるで頼み込むみたいな。
出会ってまだお互いのことをまともに知ってもいないのにそんなこと、変だって。
だけど、彼女の胸はこの間の夜よりもずっと高鳴っていた。
非日常で非現実が、目の前で手招いている。
ここでその手を取ったら、どんな世界が待っているんだろうか。
「――わか、った‥じゃあ普通にする」
「良かった」
ほっとしたような松本の口調に、また変な感じを覚える。
落ち着かないような、騒ぎ出したくなる焦燥感にも似た。
早く料理来い！ と願ってしまう。
「なんか俺今更恥ずかしいかも‥」
「ほんとだよ、恥ずかしいのはこっちだよ‥」
料理が運ばれてくるまでの数分間、二人して今までで一番訳の分からない羞恥にやられてしまったのだった。
料理が届いてからは、始終和やかに時間は流れた。
流石というか、勧められた料理は全て美味しくてついつい食べすぎてしまうほどに。
話も楽しくて、松本が語る内容に彼女は笑顔だった。
男性と二人、こんな時間を過ごしたのはいつ以来かと、心の中によぎる影に気付かないふりをして。
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お塩(プロフ) - ひーちゃんさん» ひーちゃんさん、コメントありがとうございます！えっ、ヒーちゃんさんも夢落ち潤担さんですか！？そんな偶然があるとは驚き過ぎて笑ってます。続きは実はできてるので、修正しつつそのうちページ作りますね！ゆっくりお待ちください！ (2021年9月22日 15時) (
レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
ひーちゃん(プロフ) - お塩さま、作品を楽しく拝見させて頂いております。夢堕ち潤担！私もです( ・∀・)ﾉ﹛ﾊｰｲ!何だか嬉しく思いました。続きも心待にしております。 (2021年9月22日 2時) (レス) @page28 id: af081d03e4 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさんありがとうございますっ！私の中ではむしろ一番古い話なので不思議な気分です(笑)創作意欲ばっかり溢れて実際は空回りですよ‥‥ふへへ。いつもゆぃさんに励まされてます！ほんとにありがとうございますー！！ (2021年9月1日 12時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - - ここにきてまさかの新作とは！驚きです！！お塩さんの書きたい意欲が凄い♪無理しないでくださいね~ (2021年8月30日 14時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月7日 1時
