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小話 前の彼、今の彼〜鬼灯〜 ページ37

Aは、鬼灯と結婚した


ただし、愛はない



それぞれが仕事のため


ビジネスライクな関係でだ


だが、Aにはそれが苦痛でしかなかった


結婚なら、愛がなきゃ…と思うタイプだったから


ある夜…


Aは鬼灯に、ある薬をちらつかせた


明らかに劇薬


鬼灯「…言っておきますが私に毒は…」


この獄卒ン千年の彼には、


確かにある程度の耐性もあるだろう


貴女「誰があなたにと?」

鬼灯「…まさか自分で飲む気ですか?」

貴女「そうだ、と言ったら?」

鬼灯「飲めるものなら飲んでみなさい」


どうせ飲めるわけがない、

ただの脅しのようなものだと鬼灯は思った


貴女「……」


グイッ


Aはその毒を、自分で飲んだ


鬼灯「ッ!!」

貴女「かはっ…!」


血を吐き出し、苦しむA


鬼灯「馬鹿!なぜ本当に飲んだんですか!!吐き出しなさい、今すぐに!!」


焦ったのか、毒を吐き出させようとする鬼灯


貴女「(…何をそんなに焦ってるの?)」


鬼灯「Aさん!……さ……!……!!」



鬼灯の声が遠くなる


その焦った顔と声に、満足げな顔のA


貴女「(これでいいんだ……これでお互い解放される…)」


パタ…


Aの手が、布団に落ちた





気がつくと、Aは自分の部屋にいた


夢だったのか…?


しかし、ふとカレンダーを見てハッとした


鬼灯と結婚する数カ月前に戻っている…!


つまり、今の時点で、

自分はまだ婚約すらしていない!


貴女「(これは…チャンスだ!!)」


鬼灯と婚約さえしなければ、あんな思いしなくて済む


事実、鬼灯と結婚したことで色々嫌がらせを受けたりもした


アレがもうないのだ



それに、鬼灯も望まぬ結婚をしなくて済む


これでいいんだ、と



ある日、たまたま鬼灯とふたりになった時…



鬼灯「…なぜ…」

貴女「?」

鬼灯「なぜ毒をあおったりしたんですか!!」


貴女「……!?」


それは、だいぶ先の話のはず…


なんと、鬼灯が、逆行前の記憶を持っていた!


鬼灯「…毒をあおるほど、私が嫌いだったんですか…」


悲しげな鬼灯


一度結婚して情でも移ったのか?


貴女「いいじゃないですか、お互いに望まぬ結婚しなくて…」

鬼灯「望まぬ結婚なんて、誰が言ったんですか!」

貴女「…え?」

鬼灯「やっと…やっとの思いで、結婚までこぎつけたというのに…!」


どうやら、Aの勘違いだったようだ

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作者名:Nami☆ | 作成日時:2024年2月5日 7時

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