鬼灯の冷徹小話集☆その五 (ページ34)

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小話　自己犠牲〜鬼灯〜ページ34

彼女、Aは桃源郷にいた

先日、地獄をクビになった

ある女獄卒をいじめたと、

陰湿なことをしていたと

噂が立ったのだ

もちろん身に覚えはないが

居心地が悪いので

ほぼ自分から出てきたのだ

今は白澤のもとでお世話になっている

桃太郎「しかし、Aさんがその人をいじめたなんて、どこからそんな話が…」

白澤「案外、その人が自分で…だったりして」

貴女「もういいんだよ」

ふたりの話に、首を振りつつ言うA

貴女「私は…きっと、いらない存在だったから」

桃太郎「Aさん…」

桃太郎が、悲しげに声をかける

Aは、ありがとう、と返した

ある日、事件が起きた

誰かが龍神を怒らせ、

鬼灯たちにビームを食らわそうとした

このままではみんなが…！

貴女「……！ダメっ！！」

Aは思わず走り出し

そのビームを体で受け止めた

激しい痛みと衝撃

渾身の力で、ビームを空へとずらした

貴女「はぁ…はぁ…」

おそらく背後で呆然としているであろう鬼灯たち

だが、これでいい

Aは振り返ることなく、フラフラとどこかに行く

白澤「何の音！？」

大きな音に驚いて出てきた白澤

鬼灯たちから事情を聞いた彼は、

怒りをあらわにした

白澤「…何でAちゃんを追わなかったんだよ…」

唐瓜「え、だってAさんは…」

白澤「Aちゃんは体を張って君たちを助けたんだぞ！噂みたいなことする人なら、そんなことする！？」

白澤の言葉に、言葉を失う彼ら

白澤「それにあの子言ってたよ…“もし何かで犠牲が必要なら、それは嫌われてる自分だけでいい”って！」

あの子、もともと自分を投げ出す気だったんだよ！

その言葉にハッとした獄卒たち

桃太郎「それより、早くAさんを！」

白澤「そうだね、きっと大ケガしてる…」

鬼灯「手分けして探しましょう！」

鬼灯の言葉に、一斉にAを探しに駆け出すみんな

Aの名を呼びながら、必死に探した