太宰さんの猫 (ページ7)

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007 主従関係ページ7

眩しい

いつもであれば固く、冷たい床の上で、目を覚ます。目を開けても目の前に広がるのは真っ暗で汚く狭い部屋の光景だったはず、

でも、今、目の前に広がる景色は外から差し込む日差しと真っ白い天井だった。

体を起こし、あたりを見渡すが誰もいない。
そして、昨日寝ていたところではなく、服も着せられていた。

私は夢でも見ているのだろうか。
母に捨てられたとき、すでに死んでいたのかもしれない。

扉が開き、人が入ってきた

「あ、起きたんだね。
ここは、僕の家だよ。

君が昨日いたところは私の仕事場でね。
君にも、ゆくゆくは一緒に働いてもらうかもしれないね。

あ、それとね服なんだけど、君が裸のまま人間の姿で寝ていたから、また、体調を崩すといけないと思って着させたんだ。すまないね」

夢じゃなかった。この人が私を助けてくれたんだ。

「大丈夫かい？ぼーっとして、僕の言ってることわかる？」

彼はそう言いながら私の顔の前で手を振った。

「あ、わ、わかる…」

「おぉ！ちゃんと話せるではないか！意思疎通ができてよかったよ！！君の名前は？」

「な、名前、、、あ、」

話すのは久しぶりで、うまく言葉が出てこない。

「うーん。これから君にいろいろ教えなきゃいけないことがたくさんありそうだね。

そうだ！もう、いっそのこと改名しちゃおうよ!
僕が名前をつけてあげる!

なにがいいかなぁ〜」

彼はすごく楽しそうにベットの横でニコニコしている。

「うん！決めた!君は、「A」だ！

いい名前だろう!響きもいいし、呼びやすい!
それにすごく可愛い名前だ！

どうだい？この名前！」

彼は私の頭を撫でた

「ん？A、泣いているのかい？」

そう言われてはじめて自分が泣いている事に気づいた。

この感情はなんなのだろうか。
胸が締め付けられ、全身に力が入る。

「そんなに、嫌だったかい？」

「ち、ちがう。「A」がいい。」

私を助けてくれた人が付けてくれた名前。
私の姿をはじめて受け入れてくれた人。
それだけで、私は救われた。

「そうかい。よかったよ。

僕は、太宰。

太宰治だ。」

太宰さんは私を地獄から救い出してくれた。
そこにどんな意図があったとしても、
その事実は変わらない。

この時から、私と太宰さんの主従関係は結ばれたのだった。