005 複雑な気持ち ページ5
「少し動けるかい?
動けるようならお風呂に入ってもらいたいのだけれど。
自分でできないようなら手伝うけど、猫の姿になってもらってもいいかい?そっちの方が洗いやすい」
どうやるのだろうか。
意識して猫の姿になれるものなのだろうか。
私は、頭の中で自分が猫になったときの姿をなるべく鮮明に描いた。
黒い毛並みに、長い尻尾、キントブルーの瞳に、鋭い歯、
「そうそう!自分でコントロールもできるんだね!んじゃ、早速お風呂に連れて行ってあげるね」
私は彼に抱き抱えられた。とても、暖かかった。人に触れるのがこんなにも心地よいものだとはじめて知った。
「人間用の石鹸だから本当は人間の姿の方がいいのかもしれないけれど、許してね」
彼は、私の体を気遣いながら優しく洗い上げてくれた。
気持ち悪くはないのだろうか。
人間の姿になったり、猫の姿になったり、私は普通ではない。
だから、両親からも嫌われ、捨てられた。
彼は何を考えているのだろう。
「君ほんとは、こんなにも綺麗な毛並みだったんだね。瞳の色もとても綺麗で、私の好きな色だ。」
褒められて嬉しいはずなのに、素直に喜べない。この姿になってしまったが故に今まで私は不幸な時間を過ごしてきたからだ。
彼は私をお風呂に入れた後しっかりと乾かし、黒いワンピースの部屋着をベットの横に置いてくれた。
「人間の姿に戻ったらこれを着ていいからね。
今日は、ゆっくり休んでね。
僕は、ちょっと用事があるから
あぁ、あと、この部屋からは勝手に出ないこと。
誰かに呼ばれても僕が来るまでこの部屋にいてね。
んじゃ、おやすみ。」
彼は扉から出て行ってしまった。
彼は一体誰なのだろう。
ここは一体どこなのだろう。
どうして私を助けてくれたのだろう。
いろんな謎が思い浮かんだが、体の疲労に負けて私はすぐに寝てしまうのでした。
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作者名:あや | 作成日時:2021年10月11日 3時