太宰さんの猫 (ページ17)

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016 良い人間ページ17

私たちが駆けつけた頃にはもう織田作さんは倒れていた。

「人を救う側になれ。どちらも同じなら、良い人間になれ。そのほうが、幾分かは素敵だ。」

「分かった。そうしよう」

太宰さんは織田作さんを抱えてとても苦しそうな顔で答えた。
目の前の現実に私はまだ理解できないで二人の後ろに立ち尽くしていた。

「A、こっちに近寄れ」

織田作さんに呼ばれ、近くによる。

「A、お前にはこんなに暗闇じゃなくてもっと美しく綺麗なところで生きて欲しい。そうじゃないとその美しさも輝けないからな。
お前には、太宰がいる。大丈夫だ。
お前ら二人なら、どんな場所だって怖くないだろ。」

すごく震えた声で「うん。」と一言呟いた。

人が死ぬのがこんなに、辛くて、痛くて、悲しいものだと初めて知った。
自然に涙が溢れた。
全身の力が抜け太宰さんの隣で崩れ落ちてしまった。俯き、両手で顔を覆う。

太宰さんは静かに織田作さんから手を離し
私の背中をさすってくれた。

「A、行こう。」

私は太宰さんに体を支えられてながら、織田作さんから離れた。
太宰さんは、涙ひとつ見せず私の手を引いて歩いてくれた。

家につき、太宰さんの胸元に顔を埋めた。

自分が育ったポートマフィアに、
私の大切な人を殺された。
また一人になってしまう気がして怖くなる。

太宰さんは私を抱き抱え、ベットまで運んでくれた。

「A、こっち向いて」

太宰さんの手で顔を包まれた、
親指で軽く涙を拭ってくれる。

「たとえどんな選択をしても、君は僕のそばにいてくれるかい？」

太宰さんは苦しそうにそう私に問いかけた。

「もちろんです。太宰さんがどんな選択をしても、どんな世界にいても、私の居場所はあなたの隣だけです。どこまでも、いつまでも、そばに居させてください。」

私の意思は太宰さんに拾われた日から変わっていない。
太宰さんがどんな人間でも、どんなに酷く扱われても、私は太宰さんのモノでありたい。