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「先週あの後どうだった〜?」



週初めの昼、食堂で昼食をとっていると、陽気な同期がニコニコとわたしに声をかける。



『裏切ったな?』

「だって清水さん完全にお前のことお気に入りじゃん。あんなかは割って入れないって。」

『お気に入りっていうか、たまたま地元が同じだけだから。』

「それでもだよ〜。で、楽しかった?」

『うん。わたしたちには一生縁のない会員制のバーに行ってきた。』

「すっげー!あー、やっぱついていけばよかった〜。」



「残念残念」と、本心かどうかわからない言葉をつぶやく彼に適当に返事を返す。

冷静に、いつも通り話せていただろうか。

目の前に座り、昼食を食べ始める同期をチラッと見ると「うめぇ〜」と箸を進めている。何も不審に思ってなさそう。よかった。



菊池風磨。
もう12年、わたしは彼のファン。

そんな彼に会えて一緒にお酒を飲んで、家にまで泊まってしまうなんて。

あのとき、彼の質問にわたしは何も答えられず逃げるように帰ってきてしまった。

もう二度と会うことはないんだから、いっそのことファンですって言えばよかったと思う反面、こんな粗相を犯す奴がファンだって思ってほしくないっていう気持ちもあって、結局この休日ずっと悶々としていた。



『それより、今日珍しくない?いつも外で食べてるのに。』

「あー、今日午後イチでスタジオなんだよ。』

『スタジオ?あ、この前言ってた新作のプロモーション?今あの子だよね、最近売り出し中の可愛いモデルさん。』

「そうなんだけどさ、今回だけ別枠で別の人使うことになって。うち初の男性モデル。」

『へぇ〜。珍しい。どうして?』

「やっぱ時代だな。今美しさに性別は関係ないって伝えたいっていう我々の総意。」

『かっこいいじゃない。で、誰?』

「それは秘密。まだ広報だけのオフレコ。」

『ケチ。』

「仕方ないだろ〜。この前撮影日どっかから漏らしてファンが殺到したんだから。」

『そうだったね。じゃあそれまで、CM楽しみにしてる。』



特に興味もないわたしは残りの生姜焼きを頬張る。

「お前にもサンプルやるよ〜」と差し出された袋をわたしはありがたく頂戴した。

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作者名:舞子 | 作成日時:2024年3月7日 12時

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