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『モットシリタクナッタカラ?』
彼が発している言葉は、わたしが認識している言葉と齟齬はないのだろうか。
もっと知りたいって、少なからず相手に興味や関心があるときだよね?風磨が?わたしのことを?
「なんでカタコト?」
『ど、どうして…?』
「はは(笑)七瀬さんさっきから質問ばっかり(笑)ごめんね。俺が周りくどすきたね。」
『???』
「初めて会ったあの日、最初はおとなしそうな女性だなって思ったけど、話していると仕事への情熱や取引先相手に対する立ち振る舞いが聡明でかっこよくてまずギャップにやられた。」
『えっ…、』
「俺のために頑張ってファンってことを隠そうとする気遣いや、でもそこを隠しきれてなかった部分も素直で可愛いって思った。」
『……っ?!』
「あとは純粋に顔がタイプ。連絡先聞く理由、これじゃ足りない?」
スマホの画面にはすでに見覚えのあるQRコードが表示されている。
『し、信じられません…。』
「ん?」
『だって、わたし一般人ですよ…。』
「それがどうしたの?テレビに出ているかいないかを除けば、俺だって普通の会社員だよ。それに、七瀬さんが好きになったのはこういうとき嘘つく男?」
『それは…』
「でも、まぁ、出会ってすぐに信じろは無理か。じゃあ、とりあえずアイドルじゃない俺も知ってもらうっていうことで、如何でしょうか。」
にっこり微笑みかける彼にまだ夢を見ている気分になる。もう頷くしか道が残されていなかったわたしは自分のスマホで彼のを読み取った。
「登録してくれた?」
『はい。』
「あ、きたきた。あ、背景スイーツ?可愛い〜。」
「教えてくれてありがとう」とお礼を言った彼はシートベルトを外し、車を降りる。
「仕事の邪魔してごめんね。また連絡する。」
そう手を振った彼がスタジオへ走って戻っていく。まだ、心が落ち着かない私は彼の後ろ姿が見えなくなるまでぼーっと眺めていた。
総務に戻る道中で、彼がケータリングを一口も食べていないことに気がついた。本当にわたしと話すためにスタジオを抜けてきたの?
車を降りるときに向けてくれた笑顔が、わたしの好きなビジュすぎて、その後の仕事は彼を思い出し、なかなか仕事に集中できなかった。
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作者名:舞子 | 作成日時:2024年3月7日 12時