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『今回のCMモデル、菊池さんだったんですね。』



車を出し、沈黙にならないようそう話を振ると「もういいよ、隠さなくて。」と彼は全然関係ないことを返してくる。



『……どうして、そう思ったんですか…?』

「え?一応俺もアイドルよ?何年もコンサートで俺のファンの視線や眼差し見てきたけど、七瀬さん、俺を見る目が完全にそれだった。」

『……』

「あ、否定しないんだ?(笑)」



自信満々の顔。不確かで曖昧で根拠のない理屈、何とでも言い訳できるのに、それはしたくない。

駐車場に着き、もう開き直ったわたしはシートベルトを外し、彼の方に向いた。



『すみませんでした…!』

「え?」

『あの、ごめんなさい、ファンです。ずっと風磨推しです。去年のアリーナもドームも行きました。ドラマも見てます。インスタの毎日のおはようストーリーも刹那ルも楽しみにしています。でも、あの日はプライベート時間にお仕事のことを思い出すのは働き方改革のこの時代によくないと思い、黙ってました。』

「えっと、あの、七瀬さん?」

『でも、結局バレてプライベート時間を侵害してしまった上に、ファンを家にあげてしまうと言う高リスク大迷惑行為を犯してしまいました。でもSNSにはあげていません。でもそんなこと許され、』

「七瀬さん!」



もう自分でも何言ってるかわからなくて、緊張してるほど人間ってなぜ意に反してこんなに饒舌になるんだろう、と頭の中で突っ込みながら口を動かしていたら彼に遮られる。



「迷惑だなんて思ってない。俺、すげー嬉しかった。」

『ウ、ウレシイ…?』

「うん。七瀬さんが俺のファンって気づいて舞い上がった。」



芸能人、ましてや大ファンの彼に、わたしはなんて気を遣わせてしまっているんだろう。

でもわたしの知っている菊池風磨はこう言うとき絶対そう返す。それが嬉しくてわたしは「ありがとうございます」とだけ返した。



「連絡先、聞いてもいいですか?」



彼が食べ終わるまで待ったほうがいいのかな…なんて考えていると、彼がスマホを差し出す。



『……どなたの?』

「七瀬さんの。」

『えっ、わたしですか?!』

「うん。ここには俺と七瀬さんしかいないじゃん(笑)」

『えっ、あっ、仕事のやり取りでしたらわたしは総務なので直接関係はないんです。』

「違う違う!七瀬さん個人の連絡先が知りたい。」

『ど、どうして…?』

「七瀬さんのこと、もっと知りたくなったから。」




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作者名:舞子 | 作成日時:2024年3月7日 12時

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