【歌い手】どうか私に夢をみさせて【そらる】 (ページ1)

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私にはずっと片想いをしている相手がいる。

物心ついた時に隣に住んでいたふたつ年上の男の子。

何処へ行くにも一緒で、いつも私が後ろをちょろちょろついてまわってた。

そんな私の手を優しく取って、一緒に遊んでくれてたっけ。

そんな思い出に浸る私の名前を誰かが後ろから呼んでいる。

ゆっくり振り返ると不機嫌そうな顔をした彼氏がそっと私にキスをしてきた。

「A、今日はぼーっとしすぎじゃない？」

「そうかなぁ？･･･でも別にいいでしょ？」

そうだね、と笑ってまた私にキスを落とす彼は、私の今の彼氏。

お互い、"都合のいい関係"ってやつだ。
やる事やって、さっさと解散。
どうやら今日はいつもより甘えたモードらしい。

どんどん噛み付くようなものに変わるキスを受け入れながらぼんやりとした頭で考えた。

私の片想いの相手は、私が高校生の頃に一人暮らしのためにどこかへ行ってしまった。

それはあまりにも突然で、修学旅行から帰ってきた私がお土産を渡そうと家にお邪魔した時に知った。

申し訳なさそうにするおばさんの話を聞き流して、愛想笑いで誤魔化して、自分の部屋に戻った時は大泣きした。
なんで伝えてくれなかったの。
なんで、なんで、なんで？

その時の私は馬鹿で、連絡を取りたいならおばさんにどこに住んでいるか聞けばいいし、電話番号を知っているなら電話すればいいってことに気づかなかった。

裏切れられたような衝撃と失恋した悲しさで、携帯も壊してしまったのだ。

そこから、何年も経ってるのに。

私は未だにあの人を、

……ずっと好きなままでいる。

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高校を卒業した私は自立するために地方の大学に通ったあと、都内の会社に勤めてる。
今日も一日中座りっぱなし。
無心で手を動かしているといつの間にか今日はの分は終わらせていたみたいで、上司からの急ぎの用事も割り当てられることなくそのまま帰れそうだと悟る。
立ち上がったその時だった。

「A、あの･･･さぁ」
「･･･どうかしたの？」

申し訳なさそうな仲のいい同僚の女の子に呼び止められる。そして、

「お願いが！あるの！」

勢いよく、頭を下げられた。