山短編集2(OS) (ページ4)

今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:33,008 hit

2人の形ページ4

しばらく経って急に正気に戻ったみたいに翔くんは俺から離れた。

「ごめん、汚した……」

「あやまんないでいいってば。おいらがいいっていったんだから」

泣いていたときは背中に回していた手を再び頭に持っていって、優しく撫でた。

泣き腫らした翔くんの顔をちゃんと見ると痛々しさこそあったけど、それ以上にいとおしさみたいなものが込み上げてきてーー気がついたら自分の唇を翔くんのそれに重ねていた。

自分でも少し驚きながら唇を離すと、当然翔くんも驚いていて、僅かに目の縁に残っていた雫がすうっと頬を滑り落ちた。

「……えっ……なに？」

「なにってキス？」

「いやだからなんで？」

「なんでって……キスしたくなったから」

「理由になってないよ！」

理由になってないと言われても、体がそう動いたんだからそうとしか言いようがないんだけどなあ……

翔くんは頭をかいてはあと大きな溜息をついた。

「え、やだった？」

「…………やだったというかむしろ気持ち悪いって全然思わなかったから驚いてんの！」

「えっじゃあ別によくね？」

キスとはいえ一瞬の事だし、嫌でないのならそこまで問題があるようには思えなかったけど、翔くんはそうではないようだった。

「……智くんはそういう趣味あったっけ？」

「えっ……やーでも多分仕事でもないのにキスしたの初めてだよさっきのが」

「俺のこと、好きなの？」

「好きだよ。翔くんだっておいらのこと好きでしょ？」

「まあ、好きといえば好きですけど……」

そのまま翔くんはしばらく考え込んでいたけれど、突然こくこく頷いたと思えば、いいや、と呟いた後、おれを見つめた。

「ごめんありがとう今日は。思いっきり泣いたしよく寝れそう」

そう言って笑った翔くんに、翔くんが良かったならよかったよと言い返した。