山短編集2(OS) (ページ12)

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時を越えてページ12

悲しみかはたまた怒りか、ある程度のパターンを頭で予想して待ち構えたけれど、反応は意外なものだった。

「え、マジ、翔くんも？」

驚きつつも困惑したような反応に俺は面食らったけど、その反応が意味するところを考えて、まさか……あなたも？と問い返した。

すると、智くんは持ってたバッグの中から一枚の紙を取り出した。

そこには俺でも知っている有名な海外アーティストのライブの写真と公演日が記されていた。

「おれ、今度この人のバックについて踊ることになった」

「えっマジ！すごいじゃん！」

驚きながらも賛辞を送ると、智くんは照れくさそうに笑った。

「ここんとこアメリカにもちょこちょこ行ってたんだけど、これが決まったから日本にいる時間も短くなるし、いっそのことあっちに住むかって思って家借りた」

「うわぁ……すげー偶然……」

まさかと思って借りた場所を聞くと、流石に同じマンションとは言わないまでも、同じ地区にそれぞれ家を借りていた。

「やべぇ奇跡だ……」

「ふふ、こりゃ運命だな翔くん」

普段運命とかそういう類のものは信じていないけど、流石にこのタイミングで同時にアメリカ行きを決めていたのは偶然の一致にしてもすごい。

まさかの奇跡にお互いで余韻に浸っていると、智くんが思い出したようにポケットから何かを取り出した。

「ホントはおれがアメリカ行く話したら渡そうと思ってたんだけど……」

目の前に差し出されたのは手のひらに収まりそうな少し高級感のある箱だった。

智くんがぱかっと箱を開けると、そこあったのはチェーンのついたリングだった。

「っ…………」

「会えてもまた離れ離れになっちまうと思って、なんかおれの気持ちの証みたいなもん贈りたいって思ったから、知り合いに教わって作った」

「え、手作りなのこれ……」

「そ。だからちゃんと見ると粗いところもあんだけど」

「そんなの全然分かんないよ……」

シンプルだけれども細かく模様の入ったそのリングは、絵も細かく繊細だった智くんらしさを感じた。

そして自分をここまで思ってくれていた人の思いを、年月あったとはいえ疑っていた自分がどうしようもなく恥ずかしくなった。