山短編集2(OS) (ページ11)

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時を越えてページ11

「あーもう俺この辺これないよ……」

降ろされた先のベンチでいたたまれなさで突っ伏していると、トイレに行ってくると一旦ここを離れた智くんが戻ってきて、すぐ横に腰かけた。

「……まだ怒ってる……？」

「怒ってるじゃなくて、恥ずかしかったの。誰に見られてるか分かんないんだし……」

「ごめん……今日すげぇ楽しみにしてたのに色々あって乗りたかった電車に乗れなくて、翔くん帰っちまったらどうしようって思いながら行ったら待っててくれてたからもう嬉しくてたまんなくなった」

そう言って横からぎゅーぎゅー俺を抱きしめてくる智くんに、何だかんだ理由をつけつつもこの日を待ちわびていたのは俺だけではなかったのだと分かった。

「ねぇ、どうして一度も連絡してくれなかったの？」

「一回連絡したら会いたくなるだろ。翔くんだってやりたいことあるっつってたのに、やりたいことやってるおれが邪魔んなったらダメだろ。つーか翔くんだって連絡なかったじゃん」

「俺も最初は邪魔になるかもって連絡しないでいたけど、そのうち連絡しても忘れられてたらどうしようって思ったらできなかったのよ」

「忘れるわけねぇだろ。絶対一人前んなって翔くんに会うって決めて過ごしてたんだから」

ちょっと怒ったような智くんの言い方に、俺はごめん、ごめんね、と重ねて謝った。

謝りながら智くんに伝えなければいけないことも同時に思い出して、ちょっといい？と智くんから一旦離れてきちんと座り直した。

「俺、来月からアメリカに行くんだ。勤めてるところがアメリカに支社持ってて……いつかは行ってみたかったし海外でしかできない経験もあるから、引き受けたんだけど……」

せっかくこうして会えたのに、また離れ離れの生活になることを言わなければいけないのは心苦しかったけど、隠してはおけないことだと智くんの目を見据えて言った。