さとうとしお (ページ23)

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＿＿同じ屋根の下 2 (別展開) ページ23

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s side

そこからはあまり覚えていない。

微かに記憶にあるのは

触れる指に、当たる唇。

彼の眉間によったしわ。愛おしげに細めた目尻。

そして、俺の名前を呼ぶ彼の声。

ただそれだけだった。

「、ごめん！本当にごめん！」

朝、起きると起こった事実に彼は頭を下げる。

「、気持ち悪いよな、ほんとごめん。」

頭を下げては俺を見て、言葉を並べる。

その目には
＂戸惑いと焦りと不安＂が入り混じっていた。

「大丈夫、」

ひたすらに謝る彼に、胸が苦しくなって
出てきた言葉は曖昧で。

「俺は、大丈夫。」

回らない頭で考える。

酔いが起こした、こと。

それには本音も真実もなくて

あるのは

気まずさと苦しさだけだ、と。

「だから、もう謝らないでよ。」

不安そうに揺れる目が俺を貫いて
動けなくなる体は相変わらずだった。

俺が今、こんなに苦しいのは

彼が俺を抱いたのは
本望じゃなくて過ちだった、という現実を

実感してしまったからだ。

彼には好きな人がいる。
わかっている、そんなことくらい。

でも期待してしまったのは

いつも優しい顔を向けて甘い言葉を言う
彼しか知らないからだ。

辛いとかじゃ、なくて

同居の彼に勝手に恋をして

勝手に期待して

勝手に失恋した、自分が

哀れだと、感じてしまった心が痛い。

ただ、それだけだ。

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